薬の代謝(薬物動態)

投与された薬は臓器に分布して薬効を現すわけですが、ある程度の時間が経過したあと活性を低下させ体外へ排出されなければなりません。分解・排泄機構がないと、ずっと薬が体内に残ってしまうことになります。

 

「薬が体内で代謝される」とは「薬の活性が弱められ排泄される準備がなされる」という意味です。

 

薬は身体にとって異物であるため、薬が入ってくるとそれを排泄しようという機能が働きます。防衛機能ともいえるものです。

 

まず、薬の活性を低下させるために分子構造を変化させます(活性が強まる薬もある)。それと同時に水溶性を高め、腎臓から尿中排泄されやすい形に変化させます。

 

このような代謝を主に担うのは、肝臓のミクロゾームに存在する薬物代謝酵素で、この主成分がチトクロームP-450です。

 

ただし、このチトクロームP-450は環境や併用薬物により活性が変化するため、薬物相互作用がしばしば問題となります。

 

また、薬物代謝能は遺伝子的な原因により個人差があるため、これも薬物療法上問題となります。

 

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代謝による薬の変化

 

通常の薬は、代謝を受けて活性が低下し排泄されやすくなります。

 

しかし注意しなければならないのは、代謝を受けることで逆に活性が強くなったり、異なる活性を持つようになる薬があるということです。

 

代謝による薬の変化は

 

  1. 活性が低下する
  2. 活性が強くなる
  3. 異なる活性を持つようになる

 

に分類できます。

 

1は通常の薬に見られる代謝変化で、「解毒」と呼ばれるものです。

 

2および3は、代謝的活性化と呼ばれます。3では発がん性を持つものに変化する物質もあり、有害・毒性作用の発現機構として注目されています。

 

活性代謝物

 

代謝物が活性を持つか、場合によっては前の物質より活性が強くなったものを活性代謝物といいます。

 

医薬品の中にも活性代謝物を持つものは多く存在します。

 

活性代謝物を持つ薬物
薬物活性代謝物
アロプリノール(商品名:ザイロリック)オキシプリノール
イミプラミン(商品名:トフラニール)デシプラミン
コデインモルヒネ、モルヒネ6-グルクロニド
ジアゼパム(商品名:セルシン)オキサゼパム
プリミドン(商品名:プリミドン)フェノバルビタール

 

プロドラッグ

 

医薬品の中には、プロドラッグと呼ばれる特殊な加工を施されたものがあります。

 

プロドラッグ自体は活性を示しませんが、投与後体内で酵素的、化学的な変化を受けて活性を示すようになります。

 

プロドラッグ化は

 

  • 薬の安定性向上
  • 胃腸障害の軽減
  • 吸収性の向上
  • 作用の持続化
  • 臓器選択性の向上
  •  

 

を目的とする場合が多いです。

 

プロドラッグの代表例を示します。

 

代表的なプロドラッグ
プロドラッグ親薬物プロドラッグ化の目的
ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム(商品名:ソル・コーテフ)ヒドロコルチゾン水溶性(溶解速度)増大
エリスロマイシンエチルコハク酸エステル(商品名:エリスロシンW顆粒・ドライシロップ)エリスロマイシン胃酸による失活防止
インドメタシン ファルネシル(商品名:インフリーカプセル)インドメタシン消化管への副作用軽減
セフテラム ピボキシル(商品名:トミロン)セルテラム吸収改善
バカンピシリン(商品名:ペングッド)アンピシリン吸収改善
フルスルチアミン(商品名:アリナミンF)チアミン吸収改善
ベタメタゾン吉草酸エステル(商品名:デルモゾール)ベタメタゾン吸収改善
アラセプリル(商品名:セタプリル)カプトプリル作用持続化
ハロペリドールデカン酸エステル(商品名:ハロマンス)ハロペリドール作用持続化
レボドパ(商品名:ドパストン)ドパミン脳移行性の改善

 

現在市販されている多くのプロドラッグは、受動輸送を上昇させるための加工を施されているものが多いです。

 

受動輸送を上昇させるには、脂溶性の修飾基を薬に付加しプロドラッグの脂溶性を高めることで、生体膜の透過性を向上させてやればいいのです。

 

初回通過効果

 

薬の「吸収」とは、薬が全身循環系に入ることを意味します。

 

しかし、薬を経口投与した場合、小腸上皮細胞を通過し、門脈を通って肝臓で代謝を受けたあと、やっと全身循環系に入ることになります。
この過程で薬の大部分が不活化されてしまうことがあり、これを初回通過効果と呼びます。

 

初回通過効果による薬の代謝は主に肝臓で行われますが、一部の薬は小腸上皮細胞や肺などで代謝を受けることがあります。

 

初回通過効果
消化管内の各投与経路における初回通過効果 「新しい図解薬剤学改定3版p353」

 

小腸上皮細胞の代謝に影響を与えるものとして有名なのが、グレープフルーツジュースです。

 

多くのCa拮抗薬(ニソルジピン(商品名:バイミカード)、ニカルジピン(商品名:ペルジピン)、ニフェジピン(商品名:アダラート、セパミット)など)、免疫抑制薬シクロスポリン(商品名:サンディミュン/ネオーラル)、タクロリムス(商品名:プログラフ)、睡眠導入剤トリアゾラム(商品名:ハルシオン)などは、グレープフルーツジュースと一緒に服用すると血中濃度が上昇します。

 

これは、グレープフルーツジュースに含まれるフラノクマリン系化合物が小腸上皮細胞に存在する薬物代謝酵素CYP3A4を不可逆的に不活性化することにより、これらの薬の小腸上皮細胞における初回通過効果を減弱させるためです。

 

しかし、薬を静脈注射した場合、グレープフルーツジュースの効果はほとんどありません。これは、グレープフルーツジュースは肝臓内のCYP3A4の活性には影響を及ぼさないためといわれています。

 

グレープフルーツジュースの効果は数日間持続するため注意が必要です。

 

 

薬物代謝の様式

 

薬物代謝の反応には4つの経路があります。

 

「第一相反応」

 

酸化

 

最もよくみられる経路で、主にチトクロームP-450が関与します。

 

ただし、アルコールを分解する酵素であるモノアミンオキシダーゼは上清にあり(肝ミクロゾームではない)、アルコールを酸化してアルデヒド→酢酸にします。

 

還元

 

主に、ニトロ基、アゾ基の還元が行われます。

 

加水分解

 

エステル加水分解や、アミド加水分解が行われます。

 

エステル加水分解では、アセチルコリンがコリンエステラーゼの作用でコリンと酢酸に分解されます。

 

「第二相反応」

 

抱合

 

グルコン酸抱合、アセチル抱合、グリシン抱合、硫酸抱合が行われます。
体内に存在するグルコン酸や硫酸などの物質と結合させることで、薬を無毒化します。

 

酸化、還元、加水分解、抱合は、単独あるいは連続して行われます。

 

酸化、還元、加水分解によって、薬物代謝によって薬の極性が高まり活性が低下します。そして抱合により極性がさらに高まり排泄が容易になります。

 

しかし、一部の薬では別の活性をしめすようになったり、不活性な薬が活性をしめす薬に変化することもあります。

 

薬物代謝酵素(チトクロームP-450)と薬物間相互作用

 

高齢者など慢性疾患を患っている人は、たくさんの薬を飲んでいます。

 

ここで問題となるのが薬物相互作用です。

 

薬物相互作用は、複数の薬を同時に併用することで発生する作用です。ある薬が他の薬の代謝に影響を与えることで、薬が効き過ぎたり逆に効かなくなったりするため、臨床でしばしば問題となります。

 

酵素誘導

 

ある薬が肝臓の薬物代謝酵素の活性を高めることで、それ自身や他の薬の代謝に影響をおよぼすことを酵素誘導といいます。

 

例えばフェノバルビタール(商品名:フェノバール)の投与によりある種のチトクロームP-450が誘導されます。その結果、フェノバルビタール自身やフェニトイン(商品名:アレビアチン)、ワルファリン(商品名:ワーファリン)、ジゴキシン(商品名:ジゴシン)などの代謝が促進され、薬効が低下することが報告されています。

 

酵素阻害

 

酵素誘導と逆の機構といえます。

 

ある薬が肝臓の薬物代謝酵素の活性を弱めることで、それ自身や他の薬の代謝が弱まり、薬効が強くでるものです。

 

 

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