排泄過程での薬物相互作用
薬が排泄される段階での薬物相互作用には
- 糸球体ろ過での相互作用
- 尿細管分泌における相互作用
- 尿細管再吸収における相互作用
があります。
腎臓の構成単位ネフロンと糸球体ろ過、尿細管分泌、尿細管再吸収機構
糸球体ろ過における相互作用
糸球体でろ過される薬は、血漿タンパク質(主にアルブミン)と結合していない遊離型のものです。
つまり、血漿タンパク結合率の強い薬を併用した場合、タンパク結合率が変化することで糸球体ろ過量にも変化がおこります。
また、腎血流量が変化することで糸球体ろ過率が変化することもあります。
サイアザイド系利尿薬、α-メチルドパ、ヒドララジンなどは、細動脈血圧を低下させることで腎血流量を減少させることから、併用薬の糸球体ろ過量を減少させる可能性があります。
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尿細管分泌における相互作用
多くの弱酸性薬物、弱塩基性薬物は血液中から近位尿細管へ分泌されます。
これを尿細管分泌といい、エネルギーを利用した能動輸送で行われます。
尿細管分泌には、「有機アニオン」と「有機カチオン」の2つの分泌機構が存在していることが知られています。
有機アニオン輸送系における阻害作用
有機アニオン輸送系は、弱酸性薬物が能動輸送により近位尿細管へ分泌されます。
よって、これらの薬が競合すれば、分泌阻害がおこります。
有機アニオン輸送系を介して分泌される弱酸性薬物には
- プロベネシド(商品名:ベネシッド)
- ペニシリン誘導体(例:ペニシリンG)
- アセタゾラミド(商品名:ダイアモックス)
- フロセミド(商品名:ラシックス)
- インドメタシン(商品名:インフリー)
- メトトレキサート(商品名:リウマトレックス)
などがあります。
有機カチオン輸送系における阻害作用
有機カチオン輸送系を介して分泌される弱塩基性薬物としては
- アドレナリン(商品名:アドレナリン)
- ノルアドレナリン(商品名:ノルアドレナリン)
- モルヒネ(商品名:MSコンチン)
- シメチジン(商品名:タガメット)
- ネオスチグミン(商品名:ワグスチグミン)
などがあります。
しかし、塩基性薬物間では薬物相互作用は起こりにくいとされています。
また、両性イオン型薬物であるセフェム系抗菌薬(セファレキシン(商品名:ケフレックス)など)もこの系によって輸送されます。
P-糖タンパク質による分泌
一部の薬はP-糖タンパク質を介して分泌されます。
主な薬には、ジゴキシン(商品名:ジゴシン)、ベラパミル塩酸塩(商品名:ワソラン)、キニジン硫酸塩水和物(商品名:硫酸キニジン)、シクロスポリン(商品名:サンディミュン/ネオーラル)があります。
例えばジゴキシンとペラパミルの併用により、ジゴキシンのP-糖タンパク質を介する分泌が阻害され、ジゴキシンの血中濃度が上がることが報告されています。
尿細管再吸収における相互作用
糸球体でのろ過、あるいは尿細管における分泌により排泄された薬は、主に遠位尿細管から再吸収されます。
尿細管での再吸収は濃度勾配を利用した受動拡散(エネルギーを利用しない)によって行われます。そのため、分子型の薬は再吸収されやすく、イオン型の薬は吸収されずにそのまま尿として排泄されてしまうことになります。
このことから、弱酸性薬物、弱塩基性薬物の尿細管再吸収は、尿のpHの変化に大きく影響を受けることとなります。
弱酸性薬物は酸性尿で分子型が増えることから、尿を酸性にする薬との併用では、再吸収される薬が増えます。
一方、弱酸性薬物はアルカリ尿で分子型が増えることから、尿をアルカリにする薬との併用により、再吸収される薬が増えます。
尿を酸性にする薬
尿を酸性にする薬には、アスコルビン酸(商品名:シナール)、アスピリン(商品名:バイアスピリン)、サリチル酸ナトリウム(商品名:サルソニン)、塩化アンモニウム(商品名:セキコデ配合シロップ ※配合剤として)などがあります。
よって塩基性薬物(アミトリプチリン(商品名:トリプタノール)、イミプラミン(商品名:トフラニール)、モルヒネ硫酸塩水和物(商品名:MSコンチン)など)の分子型を減らし、イオン型を増やすことから、これらの排泄を促進させます。
尿をアルカリ性にする薬
尿をアルカリ性にする薬には、炭酸水素ナトリウム、水酸化マグネシウム、アセタゾラミド(商品名:ダイアモックス)、サイアザイド系利尿薬(ヒドロクロロチアジド(商品名:ニュートライド)、トリクロルメチアジド(商品名:フルイトラン))、などがあります。
また、高尿酸血症治療薬であるウラリット(クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム配合)は、尿をアルカリ化し尿酸の結晶化を防ぐ薬として有名です。
これらは弱酸性薬物(バルビツール酸類、プロベネシド(商品名:ベネシッド)など)の分子型を減らし、イオン型を増やすことで排泄を促進させます。