メラトニンとメラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)

メラトニンとメラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)

メラトニンとメラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)

睡眠薬の歴史はバルビツール酸系睡眠薬から始まりました。
しかし、その依存性と危険性から、より「安全性の高い睡眠薬」を目指して開発が進められてきました。

 

次に登場したベンゾジアゼピン系睡眠薬は、その効果と安全性の高さから、現在広く使われています。
睡眠障害治療の主役ともいえるでしょう。

 

しかし、比較的安全性が高いといわれるベンゾジアゼピン系睡眠薬でも、筋弛緩作用によるふらつき、転倒、認知機能障害を悪化させるなど、特に高齢者に用いるのに注意が必要とされています。

 

そこで、2010年に登場した睡眠薬に注目が集まっています。
ラメルテオン(商品名:ロゼレム)です。
ラメルテオンはメラトニン受容体に作用する睡眠薬であり、従来の睡眠薬とはまったく違った薬理作用を示します。

 

ここでは、メラトニンとメラトニン受容体、ラメルテオンについて説明します。

 

メラトニンとは?

松果体から分泌されるホルモン

松果体は、間脳の第3脳室の天井から突き出た内分泌腺です。約170mgの小さな組織です。

 

松果体細胞は、血中から必須アミノ酸であるL-トリプトファンを取り込み、これを原料としてセロトニンを合成します。

 

このセロトニンからさらに複数の酵素の働きにより、メラトニンが合成されます。

 

メラトニン合成経路

 

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メラトニンは夜間に増える

上記のセロトニンからメラトニンが合成される反応において、N-アセチル転移酵素(NAT)が律速酵素です。
このNATの活性は、昼と夜ではかなりの差があり、夜間に活性が高まります。

 

つまり、メラトニンの産生と分泌は夜間に高まるのです。
一方で、セロトニンの量は夜間に低下します。メラトニンとセロトニンは逆の動きを示すのです。

 

メラトニンは概日睡眠リズムを調整している

人間はどのような時に「寝たい」と感じるのでしょうか。

 

一つ目は「疲れた時」です。
疲労した肉体を休ませるため、脳の機能を低下させるわけです。

 

2つ目は「夜になったから」です。
人間には「朝が来たから起き、夜になったから寝る」というリズムを調整する機能があり、これを概日リズム(サーカティアンリズム)といいます。一般的には体内時計と呼ばれたりします。

 

上記のように、メラトニンは夜間に活性が高まることで、睡眠を促します。
つまり、メラトニンは「自然な睡眠リズム」を調整するホルモンなのです。

 

セロトニンとメラトニンの働き

セロトニンとメラトニンの働き

 

セロトニン神経の細胞体はほとんどが脳幹の縫線核にあります。
セロトニンは「覚醒」に関わるといわれ、昼間に活性が高まります。

 

一方で、松果体から分泌されるメラトニンは夜間に活性が高まり、催眠作用を示します。

 

メラトニン受容体

 

メラトニンが結合するメラトニン受容体は、視床下部視交叉上核に位置しています。

 

メラトニン受容体にはMT1受容体とMT2受容体があり、下図のような役割を担っていると考えられています。

 

メラトニン受容体サブタイプ 生理作用
MT1受容体 催眠作用
MT2受容体 概日リズム改善作用

黒山 政一 (編集), 大谷 道輝 (編集)、 違いがわかる!同種・同効薬 改訂第2版、南江堂、2015/10、p138 参考

 

メラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)の特徴

ラメルテオンは自然な睡眠を促す

メラトニンは自然な睡眠リズムを調整している――この事実に注目して開発されたのがラメルテオン(商品名:ロゼレム)です。

 

ラメルテオンは、上記のMT1受容体、MT2受容体に作用することで、睡眠-覚醒リズムを整えます。

 

バルビツール酸系薬、ベンゾジアゼピン系薬は?

自然な睡眠を促すラメルテオンに対して、従来の睡眠薬はどのような薬理作用を示すのでしょうか。
バルビツール酸系睡眠薬やベンゾジアゼピン系睡眠薬は、主にGABAA受容体に作用することでClイオンの流入を促進させ、脳を抑制状態にもっていきます。
つまり、薬の力で、体を「疲れた状態」にすることで、催眠作用を発揮しているのです。

参考記事

 

ラメルテオンは副作用が少ない

ラメルテオンの最大のメリットは、従来の睡眠薬に見られる副作用がほぼないということです。

 

冒頭でも説明したように、初期の睡眠薬であるバルビツール酸系睡眠薬は、強い依存性、過剰服薬による呼吸抑制が問題とされていました。
また、比較的安全性の高いベンゾジアゼピン系睡眠薬でさえ、記憶障害、筋弛緩作用、反跳性不眠、せん妄などの副作用が問題視されています。

 

しかし、自然な眠りを促すラメルテオンは、こういった副作用が認められず、安全性が高いとされています。
その安全性の高さから、高齢者にも使いやすいと注目されています。

 

3ヶ月継続で効果が最大に

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、服用初日から1週間以内で不眠症状の改善効果が実感できるとされています。

 

一方でラメルテオンも服用初期から効果が得られますが、従来の睡眠薬と比べれば速効性はありません。
「投与開始から2週間前後を目安に有効性と安全性を評価すること」とされています。

 

また、「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」によると、ラメルテオンは3ヶ月程度継続することで効果が最大になるとされています。
(※参考文献:睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドラインー出口を見据えた不眠医療マニュアルーhttp://www.jssr.jp/data/pdf/suiminyaku-guideline.pdf p15)

 

ラメルテオンの注意点・副作用について

 

ただ、安全性の高いラメルテオンにも注意点があります。
ポイントを確認しておきましょう。

 

フルボキサミンマレイン酸塩(商品名:ルボックス デプロメール)との併用禁忌

フルボキサミンマレイン酸塩(商品名:ルボックス デプロメール)は肝薬物代謝酵素であるCYP1A2を強く阻害します。
ラメルテオンもCYP1A2で代謝されるため、併用によりラメルテオンの最高血中濃度、AUCが上昇し、作用が強く現れるおそれがあります。

 

また、キノロン・マクロライド系抗菌薬、アゾール系抗真菌薬、抗結核薬(リファンピシンなど)もラメルテオンの血中濃度に影響するため、併用注意とされています。

 

高度な肝機能障害のある患者はさける

ラメルテオンは主に肝臓で代謝されるため、高度な肝機能障害のある患者はさけなければなりません。

 

食後服用で吸収が低下

空腹時より食後のほうが、ラメルテオンの血中濃度が低下するというデータがあります。

 

プロラクチン上昇

ラメルテオンの副作用として特徴的なものに、プロラクチン上昇があります。
一部の外国臨床試験で認められたという報告がありますが、国内の発現頻度は不明です。

 

プロラクチン上昇は、ドパミンD2受容体遮断薬である統合失調症治療薬に有名な副作用です。
中枢神経系のドパミン神経系の一つである下垂体漏斗系が、プロラクチンなどのホルモンバランスの調整に関わっているからです(※参考記事:ドパミンD2受容体遮断薬)。

 

月経異常(無月経など)等に注意が必要です。

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