アドレナリンβ3受容体とアドレナリンβ3受容体刺激薬

アドレナリンβ3受容体とアドレナリンβ3受容体刺激薬

アドレナリンβ3受容体とアドレナリンβ3受容体刺激薬

アドレナリンβ3受容体はGsタンパク質共役型受容体です。

 

アドレナリンβ3受容体は、脂肪細胞、消化管、肝臓や骨格筋などに存在が認められています。

 

基礎代謝に関与?

アドレナリンβ3受容体の役割として有名なものは、脂肪分解作用です。
つまり、アドレナリンβ3受容体は、基礎代謝に関与しているのではないかと考えられています。

 

脂肪の貯蔵や燃焼を行なう白色脂肪細胞や褐色脂肪細胞ですが、その働きは、それぞれの細胞の表面にあるβ-3アドレナリン受容体で調節されています。β-3アドレナリン受容体にノルアドレナリンというホルモンが結合することで白色脂肪細胞から遊離脂肪酸が取り出され、褐色脂肪細胞で脂肪燃焼が行なわれるのです。

 

湧永製薬株式会社 「肥満と遺伝子の関係」

 

実際、冬眠をする動物は、アドレナリンβ3受容体を介する熱産生方法により、冬眠中もエネルギーを得ていることが分かっています。

 

アドレナリンβ3受容体が脂肪燃焼に関与しているのならば、アドレナリンβ3受容体の遺伝子タイプの違いが「太りやすさ」にも影響しているように思えます。
アドレナリンβ3受容体の遺伝子タイプにより、基礎代謝が200kcalも低くなるという報告もあります。人類の歴史は飢餓との闘いだったことから、エネルギーを溜め込める個体(遺伝子)が生き延びた結果、太りやすい人間が増えてきたとも考えられるでしょう。

 

しかし、東北大学大学院医学系研究科よると、「β3アドレナリン受容体遺伝子変異はダイエットによる減量効果に影響しない」という研究報告があります。
(参考記事:β-3アドレナリン受容体遺伝子変異はダイエットによる減量効果に影響しない(No effect of the Trp64Arg variant of the beta3-adrenergic receptor gene on weight loss by diet and exercise intervention among Japanese adults.)

 

「肥満体質」に影響する要因はβ3受容体だけでなく複数ある、ということでしょうか。

 

アドレナリンβ3受容体 刺激薬の作用

 

治療薬における重要性から考えると、アドレナリンβ3受容体はマイナーな存在です。市販されている交感神経作用薬の多くは、β1、β2受容体に作用するからです。
(※参考記事:「アドレナリンβ1受容体 刺激薬 」「アドレナリンβ2受容体 刺激薬 」

 

しかし最近、アドレナリンβ3受容体に選択的に作用する薬が登場しました。
それが、ベタニス(ミラベグロン)です。

 

ベタニスは過活動膀胱(OAB)における尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁に保険適応があります。

 

過活動膀胱(OAB)は抗コリン薬が主流

過活動膀胱の症状に必須とされるのが、尿意切迫感です。尿意切迫感とは「突然強い尿意を感じ、我慢できない」症状のことで、いわゆる頻尿のことです。

 

過活動膀胱の原因は、「アセチルコリンの過剰分泌」であるとされています。
アセチルコリンは膀胱のムスカリン受容体に作用することで、膀胱を収縮させます。

 

過活動膀胱の患者さんは、排尿直後でも過剰にアセチルコリンが分泌されているため、常に膀胱が収縮している状態です。そのため、「トイレに行ってもすぐにトイレに行きたくなる」という現象が起こるのです。

 

過活動膀胱の薬物治療は「抗コリン薬」が主流です。抗コリン薬の作用により、アセチルコリンがムスカリン受容体に結合するのを阻害してやるわけです。

 

過活動膀胱に用いられる抗コリン薬の種類は多く、有用性と安全性が十分検証されていることからガイドラインでも推奨されています。
ただ、抗コリン薬は口の乾き、便秘、眼圧上昇、といった全身性の副作用が問題となる薬でもあります。
さらに、抗コリン薬は認知機能障害を悪化させる可能性があるため、高齢者に使いにくいことも注意です。

過活動膀胱に用いられる主な抗コリン薬
一般名 商品名
オキシブチニン塩酸塩 ポラキス
プロピベリン塩酸塩 バップフォー
酒石酸トルテロジン デトルシトール
コハク酸ソリフェナシン ベシケア
イミダフェナシン ウリトス / ステーブラ

 

尿の蓄積にはノルアドレナリンが関与している

膀胱の弛緩と収縮に関与しているのはムスカリン受容体だけと考えられてきましたが、最近になり新しい発見がありました。
それは、「β3受容体が膀胱の弛緩に関与している」ということです。

 

尿が蓄積される時、ノルアドレナリンという神経伝達物質が放出されます。この物質が膀胱のβ3受容体に結合することで膀胱が弛緩し、多量の尿を蓄積できるようになります。
また、ノルアドレナリンは尿道のα1受容体に結合して、尿道を収縮させる作用もあります。

 

一方で、尿が排泄される時は、アセチルコリンが放出されて膀胱のムスカリン受容体に結合し、膀胱を収縮させます。膀胱が収縮することで溜まっていた尿が押し出されるのです。

 

蓄尿と排尿のメカニズム

蓄尿・排尿

ベタニス(ミラベグロン)は膀胱を弛緩させる

ベタニスは、膀胱のアドレナリンβ3受容体に選択的に作用することで、膀胱を弛緩させます。
つまり、過活動膀胱の患者さんに起こっている「膀胱の異常収縮」を抑える作用を示すのです。

 

ベタニスは抗コリン薬で問題となる、抗ムスカリン作用による副作用が少ないため、新しい薬理作用をもつ治療薬として注目されています。

 

アドレナリンβ3受容体刺激薬(ベタニス)の副作用

 

ベタニス(ミラベグロン)の注意すべき副作用として「心拍数の増加」「血圧上昇」があります。
やはり交感神経に作用する薬であるため、アドレナリン受容体のサブタイプ(α1,β1など)にも作用する可能性はあります。

 

また、ベタニス(ミラベグロン)は薬物間相互作用にも注意が必要な薬です。
ベタニスはCYP2D6を阻害するため、CYP2D6で代謝されるフレカイニド酢酸塩(タンボコール)、プロパフェノン塩酸塩(プロノン)の血中濃度を上昇させる可能性があります(併用禁忌)。

 

さらに、ベタニスはCYP3A4で代謝され、P-糖タンパクを阻害するため、イトラコナゾール、クラリスロマイシン、リファンピシン、フェニトイン、ジゴキシン等多くの薬と相互作用を示します。

 

ベタニスは新しい薬理作用の薬であり、臨床データが十分に集まっていません。
未知の部分が多い薬として認識しておく必要があります。

 

 

 

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