分布過程での薬物相互作用

消化器官(主に小腸)から吸収された薬は全身循環系に入り、体液によって全身に運ばれます。

 

血流量が大きい肝臓や腎臓には瞬時に分布しますが、血流量が小さい脂肪組織、筋肉、皮膚などの組織にはゆっくり分布するため時間がかかります。

 

薬の組織への分布は血流による組織への運搬と組織細胞膜の透過からなるため

 

  • 血流量の変化
  • 血漿タンパク結合率の変化

 

は薬の分布に大きな影響を与えます。

 

スポンサーリンク

薬物相互作用とタンパク結合率の変化

 

分布過程での相互作用でもっとも注意しなければならないのは、薬と血漿タンパクの結合率です。

 

薬は血漿タンパク(主にアルブミン)と結合したり離れたりしながら存在しているのですが、薬の作用を現すのは遊離型(血漿タンパクと結合していないもの)です。

 

このことから、アルブミンと結合しやすい薬を2種類以上併用すると、アルブミンを取り合いがおこり、すでに結合していた薬が追い出されて遊離型が増えることで薬の作用が増強する可能性があります。

 

血漿タンパクの競合による相互作用をおこす薬の特徴は以下のものです。

 

  • 血漿タンパク結合率が高い(結合率90%以上)
  • 投与量が多い
  • 安全域が狭い

 

(例)ワルファリン(商品名:ワーファリン)を代表とする経口抗凝固薬は血漿タンパク結合率が高いことで有名な薬である。約95%がアルブミンと結合しており、タンパク結合率が高い薬との併用により作用が強くなることが報告されている。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)のアスピリン(商品名:バイアスピリン)、インドメタシン(商品名:インテバン)などとの併用には血小板凝集抑制作用があり、ワルファリンとの併用により消化管出血を増大させる危険がある。

 

(例)スルホニルウレア剤などの経口糖尿病薬(トルブタミド(商品名:ヘキストラスチノン)など)とワルファリンはともにアルブミンとの結合率が高く、用量も多い。併用により互いの薬効を高める危険性がある。

 

(例)メトトレキサート(商品名:リウマトレックス)と非ステロイド性抗炎症薬との併用でメトトレキサートの作用が増強される。

 

 

 

 

急性炎症タンパク(α1-酸性糖タンパク、リポタンパク)

 

酸性薬物の主な結合タンパクはアルブミンであり、一部の塩基性薬物(ジアゼパム(商品名:セルシン)など)もアルブミンに特異的に結合します。
よってアルブミンは薬が結合する血漿タンパクとして主役なのですが、他にも重要や結合タンパクがあります。

 

それはα1-酸性糖タンパクやリポタンパクです。
塩基性薬物はアルブミンより、α1-酸性糖タンパクに対してより強い親和性を示します。

 

α1-酸性糖タンパクと結合する薬として

 

「三環系抗うつ薬」
  • イミプラミン(商品名:トフラニール)
  • クロミプラミン(商品名:アナフラニール)

 

「血管拡張薬」
  • ジピリダモール(商品名:ペルサンチン)

 

「抗不整脈薬」
  • ジソピラミド(商品名:リスモダン)
  • キニジン(商品名:硫酸キニジン)

 

「β遮断薬」
  • プロプラノロール(商品名:インデラル)

 

「卵胞ホルモン薬」
  • エチニルエストラジオール(商品名:プロセキソール)

 

などがあります。

 

よって、塩基性薬物でタンパク結合率の高い薬は、アルブミン濃度とα1-酸性糖タンパク濃度の両方の変動に影響を受けます。

 

併用薬以外でタンパク結合を変動させる要因

 

薬のタンパク結合率は、併用薬以外の要因によっても影響を受けます。

 

肝疾患や腎疾患を持つ患者は、血漿中のアルブミン濃度が低下していることが多く、薬のタンパク結合率が低下します。結果、遊離型の薬が増え薬効が強くでることがあるため、投与量を減量するなどの対策が必要となります。

 

また、妊娠、加齢、炎症などもタンパク結合に影響を及ぼします。

医療薬学コンテンツ・基礎編 記事リストへ

 

 

スポンサーリンク

このエントリーをはてなブックマークに追加