消化管以外からの薬の吸収 | 薬剤師の仕事研究室

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消化管以外からの薬物吸収(口腔粘膜・直腸・膣・眼・鼻粘膜・皮膚・肺・注射)

薬は主に経口投与されますが、消化管吸収過程で影響を受けたり初回通過効果で代謝されてしまうなど様々な影響を受けます。よって、薬によっては期待する薬効を得られない場合もあります。

 

また、静脈注射などの血管内投与は患者に苦痛を与えるなどの問題があり、手軽にできるものでもありません。

 

このような問題から、より簡単で効果の高い投与方法が研究されてきました。

 

現在では、口腔粘膜、直腸、膣、鼻粘膜、皮膚、肺など様々な部位から投与する薬が使われるようになっています。これらは局所作用だけでなく、全身作用を目的としたものもあります。

 

口腔粘膜からの吸収

 

口腔粘膜の投与部位は、舌下(舌下錠)と、頬と歯茎の間(口腔錠)があります。

 

これらの部位は粘膜が比較的薄く、多数の毛細血管が存在しているため、薬の吸収は良いです。

 

口腔粘膜からの吸収の特徴

 

  • 薬の吸収はほとんど受動輸送による
  • 薬の吸収はpH分配仮説に従う(分子型が多い薬のほうが吸収されやすい)
  • 吸収された薬は肝臓を通らずに直接体循環へ移行する。つまり初回通過効果を受けない

 

「医薬品例」

 

「舌下錠」
  • ニトロペン舌下錠(ニトログリセリン)……狭心症の発作を抑える
  • ニトロール錠(硝酸イソソルビド)……狭心症の発作を抑える

 

「スプレー型」
  • ミオコールスプレー(ニトログリセリン)……狭心症の発作を抑える

 

「口腔錠(バッカル錠)」
  • アズノールST錠口腔用5mg(アズレンスルホン酸ナトリウム)……抗炎症
  • イーフェンバッカル錠(フェンタニルクエン酸塩)……癌の疼痛緩和

 

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直腸からの吸収

 

直腸からの投与には坐剤の挿入や、グリセリン浣腸などの溶液注入があります。

 

従来、坐剤は痔など局所治療薬が主流でしたが、全身的作用を目的とする投与でも効果を発揮することがわかってきました。
また、小児や老人など経口投与が困難な患者にも使用できることから便利です。

 

現在は、アンヒバ坐剤(アセトアミノフェン)などの解熱剤、ダイアップ坐剤(ジアゼパム)などの痙攣抑制剤、吐気止め、抗生剤など様々な坐薬が用いられています。

 

直腸からの吸収の特徴

 

  • 薬の吸収は受動輸送によることから、pH分配仮説に従う
  • 初回通過効果を受けない(直腸投与された薬は直腸下部を支配する下腹部静脈へ吸収される。下腹部静脈は肝臓を通らずに直接大静脈へと連なる)
  • 排便の影響を受けることから、投与後の排便は直腸内での薬の滞留時間を減少させる。また、糞の存在は薬と粘膜の接触面積を少なくするため吸収を減少させる

 

「医薬品例」
  • アンヒバ坐剤小児用(アセトアミノフェン)……解熱剤
  • ダイアップ坐剤(ジアゼパム)……小児痙攣
  • ナウゼリン坐剤(ドンペリドン)……吐気止め
  • エポセリン坐剤(セフチゾキシムナトリウム)……急性気管支炎、肺炎など
  • サラゾピリン坐剤(サラゾスルファピリジン)……潰瘍性大腸炎

 

膣からの吸収

 

膣錠は、膣内の局所作用を目的とした薬です。

 

細菌やカンジダなどによる膣炎に用いられます。

 

「医薬品例」
  • クロマイ膣錠(クロラムフェニコール)……細菌性膣炎
  • フロリード腟坐剤(ミコナゾール硝酸塩)……カンジダに起因する腟炎及び外陰腟炎
  • エンペシド腟錠(クロトリマゾール)……カンジダに起因する腟炎及び外陰腟炎

 

眼からの吸収

 

眼からの吸収も、局所作用を目的としたものが多いです。

 

アレルギー、炎症、ドライアイ、感染症、白内障、緑内障などの治療薬が主流です。

 

「医薬品例」

 

「緑内障」
  • キサラタン点眼液(ラタノプロスト)
  • チモプトール点眼液(チモロールマレイン酸塩)
  • サンピロ点眼液(ピロカルピン塩酸塩)

 

「白内障」
  • カタリン(ピレノキシン)

 

「ドライアイ」
  • ジクアス点眼液(ジクアホソルナトリウム)

 

「抗炎症薬」
  • プレドニン眼軟膏(プレドニゾロン酢酸エステル)
  • フルメトロン点眼液(フルオロメトロン)
  • ブロナック点眼液(ブロムフェナクナトリウム)

 

「抗菌薬」
  • タリビッド点眼液(オフロキサシン)
  • クラビッド点眼液(レボフロキサシン水和物)

 

「抗アレルギー」
  • インタール点眼液(クロモグリク酸ナトリウム)
  • ザジテン点眼液(ケトチフェンフマル酸塩)

 

鼻粘膜からの吸収

 

鼻粘膜投与には、薬液を滴下する方法や噴霧するスプレー方式があります。

 

鼻粘膜は、鼻閉、鼻水など局所作用を目的としたものが主流ですが、デスモプレシン点鼻液(デスモプレシン酢酸塩水和物)のように全身的作用を目的としたものもあります。

 

鼻粘膜からの吸収の特徴

 

  • 基本的には受動輸送によるので、pH分配仮説に従う。ただし、低分子であれば水溶性でもある程度吸収される
  • 吸収された薬は直接体循環に移行するので、肝臓での初回通過効果を受けない

 

「医薬品例」
  • プリビナ液(ナファゾリン硝酸塩)……充血・うっ血を抑える
  • フルナーゼ点鼻液(フルチカゾンプロピオン酸エステル)……アレルギー性鼻炎
  • ザジテン点鼻液(ケトチフェンフマル酸塩)……アレルギー性鼻炎

 

皮膚からの吸収

 

皮膚は表面から表皮、真皮、皮下組織に分けられます。
表皮のもっとも外側には角質層と呼ばれる薄い層が存在しており、体内水分の蒸発や外部からの異物侵入を防ぐバリアー機能を担っています。
この角質層は、薬の経皮吸収においても最大の障壁となります。
角質層を通った薬は真皮の上部にある血管、リンパ管に侵入し、全身循環系へと移行します。

 

皮膚に用いる薬は塗布剤(軟膏、クリーム、ローション、ゲルなど)や貼付剤が主流であり、抗炎症、鎮痛といった局所作用を目的としたものがほどんどです。

 

しかし近年では、狭心症治療薬、気管支喘息治療薬、認知症治療薬、禁煙補助剤など全身的作用を目的とした薬も開発されています。

 

皮膚からの吸収の特徴

  • 受動拡散により吸収される
  • 皮膚から吸収された薬は直接体循環へ移行するため、肝臓での初回通過効果を受けない。また、投与部位での代謝も非常に少ない
  • 薬の適用が簡単である
  • 持続性基剤を用いた薬なら、投与速度のコントロールが可能
  • 副作用が発現しても、すぐに投与を中断できる
  • 部位によって角質層の厚さや付属器官の分布密度が異なるため、適用部位によって薬の吸収に大きな差がでる。例えば、ステロイド外用剤の場合、腕に比べて頬は13倍吸収率が高いとされている
  • 切り傷、やけどなどの皮膚の状態が、吸収率に大きな影響をおよぼす

 

「医薬品例」

 

塗布剤

「水虫治療薬」
  • エンペシド(クロトリマゾール)
  • ニゾラール(ケトコナゾール)
  • ラミシール(テルビナフィン塩酸塩)

 

「アトピー性皮膚炎治療薬」
  • マイザー(ジフルプレドナート)
  • アンテベート(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)
  • キンダベート(クロベタゾン酪酸エステル)

 

「抗生物質」
  • ゲンタシン(ゲンタマイシン硫酸塩)
  • アクロマイシン(テトラサイクリン塩酸塩)
  • テラジアパスタ(スルファジアジン)

 

貼付剤

  • ニトロダームTTS(ニトログリセリン)……狭心症の発作予防薬
  • ホクナリンテープ(ツロブテロール)……喘息発作予防薬
  • デュロテップパッチ(フェンタニル)……かんの疼痛緩和
  • リバスタッチパッチ(リバスチグミン)……認知症の進行抑制
  • イクセロンパッチ(リバスチグミン)……認知症の進行抑制

 

肺からの吸収

 

薬が吸入薬で投与された場合、咽頭から気管、気管支、肺胞管を経て肺胞へと移行します。
薬の吸収は肺胞で行われるため、肺胞まで薬が到達するような設計が必要です。粒子状の薬を投与する場合には0.5〜1μm程度の粒子径が理想とされています。

 

一般的に肺からの吸収はかなり速いです。それは、肺胞腔内と血管の距離が非常に短いため、物質の移行が速いからです。

 

麻酔薬や喘息治療薬の吸入が昔から用いられています。

 

肺からの吸収の特徴

  • 脂溶性の薬が吸収されやすいが、水溶性薬物でもかなり吸収される
  • 肺から吸収された薬は直接体循環へ移行するが、肺にも薬物代謝酵素が存在するため、ものによってはかなりの代謝を受ける場合がある

 

「医薬品例」
「気管支喘息治療薬」
  • セレベントディスカス(サルメテロールキシナホ酸塩)
  • メプチンエアー(プロカテロール塩酸塩水和物)
  • スピリーバ吸収用カプセル(チオトロピウム臭化物水和物)
  • フルタイドエアゾール(フルチカゾンプロピオン酸エステル)

 

注射投与による吸収

 

注射の方法には

 

  • 皮内注射
  • 皮下注射
  • 筋肉内注射
  • 静脈内注射
  • 動脈内注射

 

があります。

 

静脈内注射、動脈内注射は薬を直接血管に入れるものですが、
皮内注射、皮下注射、筋肉内注射は皮膚組織や筋肉組織に薬を注入するものなので、血管内への移行過程があります。
筋肉内や皮下へ投与された薬は、投与部位から組織内を拡散して毛細血管へ移行します。この過程は速やかで吸収率も100%に近いです。

 

血流速度は薬の吸収に大きな影響をおよぼすので、マッサージによって注射部位の血流速度を上昇させたり、ステロイドや交感神経刺激薬のような血管収縮剤によって血流を抑えると吸収が変化することがあります。

 

注射は即効性があり、経口投与できない患者にも投与できるので、様々な薬が注射薬として用いられています。
抗生剤、輸液(栄養剤、電解質補助剤)、統合失調症治療薬、心不全治療薬、利尿剤などバリエーション様々です。

 

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