カテコールアミンとは
カテコールアミンとは、以下のようにカテコール核とアミンを持っている化合物の総称です。
アドレナリン作動薬のうち、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドパミン、イソプレナリン、ドブタミンがカテコールアミンです。
カテコールアミンは体内に分布しているアドレナリン受容体に作用し、交感神経興奮に似た効果を示します。しかし、α作用、β作用の強さがそれぞれ異なるため、その違いにより発現される効果が異なり、医薬品としての使われ方も違います。
アドレナリン作動薬は作用する受容体ごとに分類したほうが分かりやすいのですが、カテコールアミンはα受容体にもβ受容体にも強く作用するものもあるため、1つのカテゴリーとしてまとめることとしました。
エピネフリン、ノルエピネフリン、ドパミンは体内で作られますが(内因性)、イソプレナリンとドブタミンは化学合成品です(外因性)。
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エピネフリン(アドレナリン)
エピネフリンという名称は米名であり、英名はアドレナリンです。
エピネフリンは主に副腎髄質クロム親和性細胞よりホルモンとして血中に放出されます。しかし、少量ですが交感神経節後線維終末からも放出されます。
α作用とβ作用の両方を持ち、アドレナリン受容体のすべてのサブタイプを強力に刺激します。
ノルエピネフリン | エピネフリン | イソプレナリン | |||
---|---|---|---|---|---|
α作用 | 強 い | < | 強 い | >> | なし |
β1作用 | かなり強い | <(=) | 強 い | < | 強 い |
β2作用 | 弱 い | << | 強 い | < | 強 い |
気管支喘息などによる気管支痙攣発作、アナフィラキシーショックの治療薬として
エピネフリンはβ2作用が強く、この特徴はノルエピネフリンとの大きな違いです(ノルエピネフリンはβ2作用は弱い)。
β2作用により気管支平滑筋を弛緩させて気道を拡張するとともに、肥満細胞からのヒスタミンやSRS-Aなどのアレルギー性メディエーターの遊離を抑制するため、気管支喘息の発作による救急に使用されます。
医薬品例はボスミン注1mg(アドレナリン)です。
また気管支拡張作用に加えて、α作用によって血管が収縮して充血が除かれるため、気管支粘膜や眼のの充血と浮腫を抑える効果もあります。
このことから、小児のアナフィラキシーショックの治療にアドレナリン製剤であるエピペン注射液(アドレナリン)がよく使われます。
「医薬品例」
- ボスミン注1mg(アドレナリン)
- エピペン注射液(アドレナリン)
急性低血圧、心停止の補助治療薬として
ボスミン(アドレナリン)は、急性低血圧またはショック時の補助治療や、心停止の補助治療にも使用されます。
「医薬品例」
- ボスミン注1mg(アドレナリン)
ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)
ノルエピネフリンは交感神経節後線維の伝達物質です。
α作用が強く、すべてのサブタイプを刺激します。
一方で、β受容体に対してはβ1受容体に選択性を示します。例えば、血管や気管支に対するβ2作用(拡張作用)は弱いが、心臓に対するβ1作用(収縮力増強、心拍数増加)はかなり強く、強力な心臓興奮、血圧上昇を示します。
α作用は、エピネフリンより弱いです。
ショック時の昇圧剤として
急性心筋梗塞で患者さんが運び込まれた時、ショック状態から回復させるためにノルエピネフリン(商品名:ノルアドレナリン)はよく使われます。
ノルエピネフリンはβ2作用に基づく血管拡張は起こさないため、血管に対するα作用が直接的に現れます。つまり、急激に血圧を上昇させたい時(非常時)に効果を発揮する薬といえます。
ただし、心原性ショックの第一選択薬はドパミンです。ノルエピネフリンはドパミンが無効な場合に使用されます。
「医薬品例」
- ノルアドレナリン注1mg(ノルエピネフリン)
ドパミン
ドパミンは中枢神経系の重要な情報伝達物質であり、パーキンソン病や統合失調症の病態に関わっています。
また、ドパミンはノルエピネフリンの生合成前駆体であるため、よく似た構造をしています。
そのため、ドパミンは神経終末からのノルエピネフリン放出を促すことでアドレナリン受容体に対する弱い間接作用を示しますが、この作用がドパミンの心機能亢進作用に関与しています。
ドパミンは少量の場合、腎、腸間膜、冠血管に分布するドパミンD1受容体に作用することで血管拡張作用を示しますが、その他の血管はα作用で収縮させます。
このようにドパミンは、血管に対して拡張と収縮の二面性を併せ持っているため、少量では拡張期圧はほとんど変化しません。
しかし、ドパミン大量投与(点滴速度15μg/kg/min以上)ではα1作用がD1作用より優位となりすべての血管が収縮するため、血圧が上昇します。
また、心臓のβ作用も増強されるため、不整脈等の副作用が起こりやすくなります。
急性心不全の第一選択薬
ドパミン(商品名:イノバン)は急性心不全の第一選択薬として重要です。
それは、他のカテコールアミン(エピネフリン、ノルエピネフリン、ドブタミン)と比較して
- 心拍数をあまり上昇させずに心拍出量を増大させることができる
- 腎血流を増加させるので十分な尿量が確保できる
という利点があるからです。
注射薬のイノバン注は、急性心不全の切り札として使われています。
「医薬品例」
- イノバン注(ドパミン塩酸塩)
イソプレナリン
イソプレナリンはエピネフリンのN-メチル基をN-イソプロピル基で置換したものです。
β作用は強いですが、β受容体のサブタイプに対する選択性はありません。また、α作用は極めて弱いので、通常は無視できます。
心筋梗塞などによる急性心不全
β1作用により心機能を亢進させるため(心拍数増加、心収縮力増大)、急性心不全の適応があります。
「医薬品例」
- プロタノールL注(イソプレナリン塩酸塩)
気管支喘息の重度発作時
β2作用により気管支拡張させるとともに、ヒスタミンなどのケミカルメディエーターの放出を抑制する効果があるため、気管支喘息や肺気腫に適応があります。
しかし、β1作用により心臓に影響を与えることから、現在の気管支喘息の治療には選択的β2作動薬がよく使われます。イソプレナリンはこれらの薬が有効でない場合のみに用いられます。
「医薬品例」
- アスプール液(0.5%)(イソプレナリン塩酸塩)
- イソパール・P配合カプセル(イソプレナリン塩酸塩)
ドブタミン
ドブタミンはかつて、β選択性の直接型カテコールアミンと考えられていましたが、実際は複雑な薬理作用を有することがわかってきました。
ドブタミンには2つの異性体が存在し、(-)体は強力なα1刺激作用を有するため血圧を上昇させますが、逆に(+)体はα1遮断薬であり、(-)体のα1作用に拮抗します。
どちらの異性体もβ作用がありますが、その作用は(+)体のほうが(-)体より10倍強いです。臨床で使用される医薬品はラセミ体であるため、両者の性質が混在しています。
急性心不全における心収縮力増強
ドパミンやノルエピネフリンと同じく、急性心不全における心収縮力増強を目的として使用されています。
「医薬品例」
- ドブトレックス(ドブタミン塩酸塩)