薬の投与方法 | 薬剤師の仕事研究室

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薬の投与方法

薬は様々な方法で投与されます。

 

患者の状態によって使い分けているのですが、薬の性質によって投与方法が選択される場合もあります。

 

それぞれの投与方法のメリットとデメリットを確認しておきましょう。

 

 

経口投与

 

もっともポピュラーな投与方法です。

 

口から投与された薬は消化管で溶け、主として小腸粘膜から吸収されます。
次に門脈を通って肝臓に入り、続いて肝静脈、心臓を経由して全身を回ります。

 

経口投与のメリットは簡単かつ苦痛が少ないという点です。
特殊な器具を必要とせず、痛みもありません。
また、用量や剤形の選択を自由に行える場合が多いです。

 

デメリットは、大きな錠剤の場合、小児や高齢者には嚥下に苦痛が伴う点です。そういった場合は錠剤を粉砕したり、散剤に剤形変更したりします。
ただし、徐放錠や腸溶錠など特殊な加工をしてある錠剤は、粉砕することができません。錠剤によって粉砕できるものとできないものがあるので、粉砕の可否を調べるという手間もかかります。

 

経口投与される薬は初回通過効果を受けるということも確認しておかなければなりません。
薬は経口投与されると、消化管(胃・小腸・大腸上部)から吸収されて毛細血管へ移行します。そして全身循環系に入る前に門脈を経て肝臓に入り、主に肝臓の薬物代謝機能により何割か分解されてしまいます(消化管粘膜に存在する酵素によっても代謝を受ける場合もある)。
この全身循環に入る前に肝臓・消化管粘膜で受ける代謝を初回通過効果といいます。
つまり、初回通過効果を受けて何割か減った薬が効果を発揮することになります。

 

薬の性質上、経口投与できないものもあります。

 

経口投与に適さないものには

 

  • 消化管などで分解されるもの(インスリンなどのペプチドホルモン、アドレナリンなど)
  • 腸管からの吸収が悪いもの
  • 肝臓で分解されるもの(テストステロン、エストラジオール、プロゲステロンなど)
  • 刺激性の強いもの

 

などがあります。

 

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注射

 

経口投与ができない患者や、緊急時などの場合は注射が用いられます。

 

●皮膚の構造と注射の種類
皮膚の構造と注射の種類

 

皮膚は表面から表皮、真皮、皮下組織があり、さらにその下に筋肉や静脈が存在しています。

 

表皮の最も外側には、角質と呼ばれる厚さ10〜15μmの薄い層が存在しています。角質層は物質の透過性がきわめて低く、外部からの異物の侵入や体内水分の蒸発を防ぐという皮膚のバリアー機能を担っています。

 

薬物の吸収においても角質層が最大のバリアーとなるため、薬を速やかに投与するには角質層を針で貫くという行為を行わなければなりません。
しかし、後述する貼付剤などで除々に薬を吸収させるときは、皮膚を傷つける必要はありません。

 

皮内注射

 

検査目的で用いられることが多い方法です。ツベルクリン反応や、アレルギーの抗原を調べる時などに実施されます。

 

皮下注射

 

薬液を皮膚層(皮下組織)を通じて組織内へ入れます。薬は毛細血管から吸収されるため、消化液と接触しません。肝臓を通らずに全身循環に移行します。

 

注射針を深く刺す必要がないのでその時の痛みは少ないですが、薬液を注入するときに薬によっては痛みがあるものもあります(医師の腕にもよる)。そのため、刺激性のものは適していません。

 

インフルエンザやB型肝炎の予防接種に用いられます。

 

筋肉内注射

 

注射針を骨格筋内へ入れ薬液を注入します。
皮下注射よりも吸収が速く、油性や懸濁性の薬の適用によいとされています。
しかし除々に吸収されるため、静脈内注射よりも作用は持続的です。

 

静脈注射のように血管を探す必要がないので、比較的簡単な方法といえます。
ただし、骨格筋に深く注射針を差し込むので筋肉細胞を若干破壊してしまうことから、痛みが強いことが特徴です。腕やお尻に打つことが多いです。

 

持続性のある薬を投与する場合、筋肉内注射が用いられることが多いです。
例えば、統合失調症に用いられるハロマンス注(ハロペリドール)は4週間隔で筋肉内注射されます。

 

静脈内注射

 

薬を静脈に注入します。薬が全量血中に入るので、血中濃度を急速に高めることができます。
輸液や輸血にはこの方法がとられます。
また、刺激性薬物の適用もできるというメリットがあります。
持続注入の方法によって、大部分の薬の投与が可能です。

 

デメリットとしては、薬を間違えた場合、後戻りができないという点があります。全量がいっきに血中に入ってしまうからです。
また、輸液を行う場合、配合変化を起こす薬があります。沈殿したり凝固してしまうものもあるのでチェックが必要です。

 

動脈内注射

 

血管造影など特殊なケースで用いられます。

 

 

舌下投与(口腔粘膜からの吸収)

 

舌下に薬を置き、唾液で溶かして口腔粘膜から吸収させます。

 

舌下の粘膜は比較的薄く、多数の毛細血管が存在するため薬の吸収は良いです。そのため即効性があり、効果が高いとされています。
門脈は通らず肝臓を通過しないので、初回通過効果を受けません。直接血中に入ります。

 

この投与方法を用いる薬としては、ニトロペン舌下錠(ニトログリセリン)が有名です。
また、同じニトログリセリン製剤で、ミオコールスプレーという薬もあります。舌下に噴霧することで狭心症発作を抑えます。浴室で突然の発作が起こったときなどに有用です。

 

舌下投与と同じように口腔粘膜から薬を吸収させるものとして口腔錠(バッカル錠)があります。顎と歯茎の間に錠剤を挟み込み、除々に溶解させることで薬を吸収させます。
医薬品例としては「強オピオイド鎮痛剤を定時投与中の癌患者における突出痛の鎮痛」を目的としたイーフェンバッカル錠(フェンタニルクエン酸塩)があります。

 

直腸内投与

 

坐薬として肛門に挿入します。
薬は直腸粘膜から吸収され、門脈は通らず肝臓を通過しないで、直接血中に入ります。吸収は速く効果も高いです。
嘔吐があったり、乳幼児で経口投与が難しい場合に便利な投与方法です。

 

代表的な坐薬として

 

  • 解熱剤のアンヒバ坐剤小児用(アセトアミノフェン)
  • 小児の熱性けいれんや、てんかんのけいれん発作を改善するダイアップ坐剤(ジアゼパム)
  • 吐気止めのナウゼリン坐剤(ドンペリドン)

 

などがあります。

 

局所適用

 

皮膚や眼、膣などの粘膜に適用し、薬を接触部位に直接作用させます。

 

  • 軟膏
  • 湿布剤
  • 点眼剤
  • 眼軟膏剤(結膜からの吸収)
  • 点鼻剤
  • エアゾール(呼吸器から)
  • 膣錠

 

などがあります。

 

※一般的に点鼻剤は局所作用を目的としていますが、デスモプレシン点鼻液(デスモプレシン酢酸塩水和物)のように全身的作用を目的としたものもあります。デスモプレシン点鼻液は中枢性尿崩症の治療に用いられます。

 

薬効が持続する貼付剤

 

薬剤学の発展に伴い、ドラッグデリバリーシステムを用いた薬が数多く開発されるようになりました。

 

ドラッグデリバリーシステムとは「薬を必要な量、必要な場所に、必要な時間だけ送達する」技術のことです。つまり、薬効をできるだけ高め、副作用をできるだけ減らすことを目的として開発されている技術といえます。

 

この技術の発展により、放出制御を目的とした貼付剤が次々と開発されるようになりました。この経皮治療システム(transdermal therapeutic system)はTTSと呼ばれます。
痛み止めの湿布剤のように局所作用を目的とするのではなく、薬を皮膚から全身循環系に移行させ全身的に薬効を発現させることを目的としています。
皮膚から吸収された薬は直接体循環に移行するため、肝臓での初回通過効果を受けず、投与部位での代謝も非常に少ないことが特徴です。
また、皮膚から薬が除々に吸収されるため薬効の持続時間が長いことから、狭心症や喘息などの発作予防に適しています。

 

放出制御を目的とした貼付剤で有名なものは、ニトロダームTTS(ニトログリセリン)です。薬効が24〜48時間持続するため、1日1回の貼付でよく、狭心症の予防に有用な製剤です。
1981年に米国でニトログリセリンのTTSが発売されて以来、様々な疾患で経皮投与製剤が開発されました。

 

ホクナリンテープ(ツロブテロール)は、主に小児の気管支喘息の発作予防に用いられます。ツロブテロールはβ2刺激薬であり、気管支平滑筋を拡張させる効果があります。

 

また、がんの疼痛を抑える薬として、デュロテップMTパッチ(フェンタニル)があります。非常に持続時間が長く、3日毎に貼り替えて使用します。

 

経皮吸収型製剤は、認知症の分野でも用いられ始めました。
代表的な薬はリバスタッチパッチ(リバスチグミン)、イクセロンパッチ(リバスチグミン)です。
リバスチグミンはコリンエステラーゼ阻害剤であり、脳内アセチルコリンを増加させるとともに、ニコチン性アセチルコリン受容体の感受性を亢進させます。
1日1回4.5mg製剤から始めて、4週毎に4.5mgずつ増量し、1日1回18mgで維持します。

 

このように経皮吸収型製剤は優れた薬なのですが、問題点もあります。
長い時間皮膚に薬が接するため、かぶれや刺激感など皮膚の異常を訴える患者さんが多いことです。
そういった場合は貼付場所に、ヒルドイドローション(ヘパリン類似物質)などの保湿剤やステロイドなどの軟膏を塗布することもあります。

 

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