心筋梗塞の再発を予防するための薬

急性心筋梗塞の急性期を脱すると、慢性期の治療が外来で始まります。

 

心筋梗塞後の死亡原因は

  • 心不全
  • 不整脈
  • 心筋梗塞の再発

の3つとされており、これらを防ぐために薬物治療のメニューが組まれます。

 

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抗血小板薬

 

再発予防の中で重要なのが、血栓が再び作られるのを防ぐことです。

 

この血栓予防として、抗血小板薬が用いられます。

 

抗血小板薬はあくまで血栓ができるのを予防するものであり、できてしまった血栓を溶かすことはできません。血栓溶解薬にはウロナーゼやt-PAがあり、心筋梗塞の急性期治療に用いられます。

 

抗血小板薬には様々なものがありますが、昔から使われてきたものにバファリン配合錠A81(アスピリン・ダイアルミネート配合剤)、バイアスピリン(アスピリン)、パナルジン(チクロピジン塩酸塩)があります。

 

ただし、パナルジンは無顆粒球症、肝障害などの副作用が報告されており、これらは投与開始後2ヶ月以内に発症するとされているので、定期的な血液検査を行わなければなりません。

 

このような副作用のを改善する目的なのか、パナルジンと同じメーカーであるサノフィ株式会社からプラビックス(クロピドグレル硫酸塩)が発売されました。

 

プラビックスは1日1回投与であり(パナルジンは1日2〜3回投与)、パナルジンと比べて代謝酵素が違うので肝障害の副作用が少ないといわれています。

 

「抗血小板薬」

 

  • バファリン配合錠A81(アスピリン・ダイアルミネート配合剤)
  • バイアスピリン(アスピリン)
「薬理」

血小板にあるトロンボキサンA2(TXA2)という物質ができないようにする。
TXA2は血栓をつくりやすくする作用がある。

 

  • ペルサンチン、アンギナール(ジピリダモール)
  • パナルジン(チクロピジン塩酸塩)
  • プレタール(シロスタゾール)
  • プラビックス(クロピドグレル硫酸塩)
「薬理」

cAMPを増加させて血栓をできにくくさせる。

 

 

 

抗凝固薬

 

さらに血栓予防を強化するために、抗凝固薬が用いられます。

 

ここで抗血小板薬と抗凝固薬の違いを確認しておきます。

 

血管内の血栓はおもに、静脈系にできる赤色血栓(フィブリン血栓)と、動脈系にできる白色血栓(血小板血栓)に分けられます。

 

赤色血栓の予防には抗凝固薬と呼ばれるワーファリン(ワルファリンカリウム)やプラザキサ(ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩)などが用いられます。

 

白色血栓の予防には抗血小板薬と呼ばれるバファリン配合錠A81(アスピリン・ダイアルミネート配合剤)やプラビックス(クロピドグレル硫酸塩)が用いられます。

 

抗血小板療法 抗凝固療法
  • バファリン配合錠A81(アスピリン・ダイアルミネート配合剤)
  • バイアスピリン(アスピリン)
  • パナルジン(チクロピジン)
  • プラビックス(クロピドグレル)
  • プレタール(シロスタゾール)

など

「ヘパリン」

  • ヘパリンナトリウム(ヘパリンナトリウム)

 

「クマリン系」

  • ワーファリン(ワルファリンカリウム)

 

「トロンビン直接阻害薬」

  • プラザキサ(ダビガトランエトキシラートメタンスルホン酸塩)

 

「合成Xa阻害薬」

  • アリクストラ(フォンダパリヌクスナトリウム)

 

「経口直接Xa阻害薬」

  • イグザレルト(リバーロキサバン)
  • エリキュース(アピキサバン)
  • リクシアナ(エドキサバントシル酸塩水和物)

「動脈血栓」

  • アテローム血栓性脳梗塞
  • 心筋梗塞・狭心症
  • 経皮的冠動脈形成術後
  • 閉塞性動脈硬化症

「静脈血栓」

  • 心原性脳塞栓症
  • 深部静脈血栓症
  • 肺血栓塞栓症
  • 人工弁置換術後

 

 

抗凝固薬としてはワーファリン(ワルファリンカリウム)が長く臨床で用いられてきました。

 

成人の場合、維持量は1日1回1〜5mgであり、数日かけて血液凝固検査で目標治療域に入るよう調節していきます。

 

ただし、安定した効果がでるまでに1週間ほどかかることや、ビタミンK製剤のグラケー(メナテトレノン)や、ビタミンKを多く含む納豆、ホウレンソウとの併用で効果が弱くなるなどの欠点もあります。

 

このように長く抗凝固薬の主役であったワーファリンですが、近年、ワーファリンに代わる新薬が続々と発売されています。

 

  • プラザキサ(ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩)
  • イグザレルト(リバーロキサバン)
  • エリキュース(アピキサバン)
  • リクシアナ(エドキサバントシル酸塩水和物)

 

などです。

 

ワーファリンはビタミンK依存性血液凝固因子の生合成を抑制して抗凝固作用を示すのですが、プラザキサは直接トロンビンの活性を阻害してフィブリンの産生を抑制します。
よって、ビタミンKとの相互作用なく血液凝固検査をする必要がないことから、ワーファリンより使いやすいと発売当時はもてはやされました。

 

しかし、高齢者や腎機能障害者には禁忌または減量が必要であることや、抗真菌剤であるイトラコナゾール(商品名:イトラート、イトリゾール)との併用により血中濃度が上がること(イトラコナゾールによるP-糖タンパクの阻害による)、薬価の高さなども問題視されています。

 

イグザレルト、エリキュース、リクシアナは直接第]a因子を阻害することで抗凝固作用を示す、新しい機序の薬です。

 

プラザキサ、リクシアナ、イグザレルト、エリキュースは、新規経口抗凝固薬(NOAC)と総称されていますが、保険適応上の違いがあります。

 

抗血小板薬、抗凝固薬は他にも様々な新薬や合剤が発売されていて、現在(2015年)活発な市場となっています。詳しくは抗血栓薬のコンテンツで説明します。

 

 

抗不整脈薬

 

不整脈は心筋梗塞後の死亡原因として有名であり、必ず対応しなければならない疾患です。

 

ほとんどの患者に心室性期外収縮が見られると言われます。また、心室頻拍、心室細動の発症もしばしばみられます。

 

治療薬としては、メキシチール(メキシレチン塩酸塩)、アスペノン(アプリンジン塩酸塩)、リスモダン(ジソピラミド)などがよく使用されます。

 

 

心不全の予防

 

ACE阻害薬やARB,β遮断薬が心不全や不整脈の発生を防ぐとされています。

 

また、心不全を予防するということは、当然心筋梗塞の再発を予防することでもあります。

 

心筋梗塞は狭心症が悪化してしまった状態ともいえるので、狭心症の治療のようにカルシウム拮抗薬(アダラート(ニフェジピン)、ヘルベッサー(ジルチアゼム塩酸塩)など)や硝酸薬(ニトログリセリン、ニトロール)などの用いて再発予防を行います。

 

高脂血症や糖尿病の治療は再発予防に必須

 

急性心筋梗塞の発症早期から、コレステロール(LDL)を低下させるための治療が行われなければなりません。

 

LDLコレステロール値は100mg/dL以下が目標とされ、可能ならば70〜80mg/dLを目指します。

 

薬物療法としては、クレストール(ロスバスタチンカルシウム)やリバロ(ピタバスタチンカルシウム)などのスタチンや、EPAと呼ばれるエパデールS(イコサペント酸エチル)が用いられます。

 

また、糖尿病の治療も心筋梗塞の再発予防に必須とされています。

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