血栓溶解薬とは?血栓を溶かす強力な薬 : t-PA
血栓溶解薬は、心筋梗塞や脳梗塞などの原因となる血栓を溶かす作用を持つ薬です。
血栓溶解薬が必要とされるのは、心筋梗塞などが発生した今その時、つまり急性期です。
血管を塞栓している血栓を溶かし血流を回復させるため、最近ではt-PAなどを用いて治療します。
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血液凝固の機序とプラスミン
まず、血液が固まるメカニズムについて確認しておきます。
血液凝固は、第Tから第]V因子までの12の凝固因子が関与しています(※第Y因子は欠番)。
血液凝固機序は
- 第1相(外因性過程と内因性過程)
- 第2相(プロトロンビンからトロンビンが合成される経路)
- 第3相(フィブリノーゲンからフィブリンが合成される経路)
- 第4相(プラスミノーゲンからプラスミンが合成される経路。血栓が溶ける過程)
の4つに分けられます。
第1相から第3相までが凝固過程であり、
第4相は溶解過程です。
血液凝固過程
「第1相」
上図のように第1相は内因性過程と外因性過程に分けられます。
多くの因子が関連し合い複雑ですが、どちらも第]因子を活性型の]aに変化させることを目指して進行します。
]aはCa+、血小板第3因子存在下で第X因子とトロンボプラスチンという複合体を作ります。
「第2相」
第1相で生じたトロンボプラスチンはタンパク分解酵素であり、血漿中にあるプロトロンビンを分解してトロンビンに変えます。
生じたトロンビンは、内因性過程の第[因子複合体の形成を促進する作用もあります。
また、トロンビンは第]V因子を活性化する作用をもちます。活性化された第]V因子は、第3相に関与する因子です。
「第3相」
3段階の反応過程から成ります。
第1段階は、トロンビンの酵素反応によりフィブリノーゲンからフィブリンモノマーが形成される過程です。
第2段階はフィブリンモノマーが重合してフィブリンポリマーを作る過程です。
第3段階は、トロンビンにより形成された第]V因子により可溶性フィブリンが不溶性フィブリン(安定化フィブリン)に変わる過程です。
この安定化フィブリンは赤血球などを包み込み血餅(血の塊)となります。
「第4相」
採血して試験管内で固まった血液は、放置しておくとやがて溶けます。
また、健常人ならば血管内にできた血栓もやがて溶けるため、心筋梗塞などの病気は発症しません。
これを線維素溶解といい、血漿タンパクの一種であるプラスミノーゲンが、プラスミノーゲン活性化因子の作用でプラスミンに変わり、フィブリンを分解することで起こります。
血栓溶解薬の種類と薬理作用
血栓溶解薬は、
従来の薬である
ウロキナーゼ(商品名:ウロナーゼ)
と
高い効果が期待できる
t-PA(組織プラスミノーゲンアクチベータ)
に分類できます。
t-PAは総称であり、アルテプラーゼ(商品名:アクチバシン、グルトパ)、モンテプラーゼ(商品名:クリアクター)があります。
ウロキナーゼとt-PAは、プラスミノーゲンを活性化しプラスミンにすることで、血栓を溶解する作用を発現させます。
プラスミノーゲンを活性化する物質をプラスミノーゲンアクチベーター(活性物質)といいますが、尿中に存在するウロキナーゼはこのアクチベーターの代表的なもので、昔から血栓治療などに使われてきました。
一方で血管壁や組織で産生されるアクチベーターは組織プラスミノーゲンアクチベーターとよばれています。
血栓溶解薬の主役となったt-PA
急性心筋梗塞の急性期などでは、t-PAが第一選択とされるようになりました。
それは、t-PAはウロキナーゼより血栓への選択性が高く、安全性が高いからです。
t-PAもウロキナーゼも、プラスミノーゲンに作用してプラスミンの生成を促進させ、血栓を溶解させます。
t-PAは血栓に吸着して血栓中のプラスミノーゲンに作用するため選択性が高く、効果も高いと言えます。また、全身の血液に作用しないため安全性も高いです。
しかし、ウロナーゼは流れている血液中のプラスミノーゲンに作用するため、全身の血液に作用してしまいます。 そのため、生成されたプラスミンは血液中で除々に分解されてしまいます。 つまり、効果と安全性は、t-PAより低いといえます。