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また出てきた!薬剤師不要論
みなさんは経済学者の池田信夫氏がツイートした発言を知っていますか?
それは「薬剤師はいらない」というもの。
薬剤師は有害無益な免許
独占業務をなくせ
処方箋通り薬を出すのはバイトでもできる
などなど、6/5にツイートされた発言に賛否両論が集まり、大炎上しています。
一連のツイートに対する意見を眺めてみると、池田氏に対するネット民の批判が圧倒的ですね。
「この人大丈夫か?」というw
参考URL:https://togetter.com/li/1117373
池田氏は薬剤師否定論者として有名であり、過去にも「薬のネット販売における規制問題」において、薬剤師会を痛烈に批判しています。
それは薬剤師が不要な職業だからである。
昔は薬剤師が薬を調合したので、免許がないと危険だったが、今は医師の処方した薬を出すだけだ。
コンビニでもネットでもできる。しかし、ではなく、だからこそ彼らは政治力をもつのだ。
引用元:池田信夫blog
「薬剤師がいないと薬を売ってはいけない」という規制を守ることは、彼らの生命線である。
ネット販売を許したら、スーパーでもコンビニでも自由に薬が売られるようになり、価格競争が始まったら既存の薬局は勝てない――酒屋が免許の廃止で消えたように。
だから薬剤師が政治家に献金するのも、政治家が薬剤師を守るのも、官僚が彼らの利権を守るのも合理的なのだ。
引用元:池田信夫blog
みなさんは彼の発言についてどう思いますか?
本当に薬剤師はいらない仕事なのでしょうか?
薬剤師をなくし規制を緩和すれば、医療はより良くなる?
私は薬剤師として飯を食ってる者です。
当然、彼の発言に対して言いたいことは山ほどあります。
ですが、当事者として利益を得ている者の発言は、多かれ少なかれポジショントークになるもの。
「自分に不利な意見だから否定したいんでしょ」と思われるのは当然でしょう。
しかし、それでも一言だけ言わせていただきたい。
この程度の見識でエラソーに薬剤師を語るな。
池田氏のツイート内容は事実誤認が多すぎます。
薬剤師なんかいらない。医師の出した処方箋でコンビニやネットで買えばいい。日本以外の国はそうなっている。それをケンコーコムがやったら、厚労省が法改正までして阻止した。
— 池田信夫 (@ikedanob) 2017年6月5日
厚労省が院外処方の点数を異常に上げたために、調剤薬局がパチンコ屋よりもうかるようになった。医薬分業なんて、今や意味がない。 https://t.co/3nPABBA69c
— 池田信夫 (@ikedanob) 2017年6月5日
欧米諸国では処方箋があればコンビニ、ネットで自由に医薬品が購入できるらしいです。。
そんなわけあるかい!
処方箋医薬品は薬剤師の監査がなければ購入することはできません。
米国、カナダの薬剤師はpharmacistと呼ばれ、「医薬品のプロフェッショナル」として高く評価されています。
pharmacistの権限は日本の薬剤師より格段に広く、リフィル、共同薬物治療管理(CDTM=Collavolative Drug Therapy Management)、予防接種など様々な医療行為を行うことができます。
これは、ファーマシーテクニシャンという調剤助手が、pharmacistの業務を支援しているからでもあります。
インターネットでの医薬品の購入も、日本より制度が整っています。
米国ではメールオーダーサービスを介して、処方薬を郵送で患者宅に届けるシステムがあります。
しかし、監査業務は必ず薬剤師が行わなければなりません。
池田氏は「医薬分業は意味ない」と言っていますが、医薬分業のシステムは日本で作られたものではありません。
医薬分業の発祥は13世紀のヨーロッパです。神聖ローマ帝国のフリードリヒ2世が毒殺を恐れて、医師の処方した薬を別の者にチェックさせたのが起源とされています。
1240年に医師が薬局を持つことを禁止し、これが医薬分業と薬剤師の起源とされています。
参考記事:なぜ日本の医薬分業は遅れたか
ヨーロッパで始まった医薬分業制度は800年近い歴史があり、今や先進国では当たり前となっています。
医薬分業はグローバルスタンダードなのです。
一方、医薬分業が日本に導入されたのは明治ですが、本格的に動き始めたのは戦後です。
日本の分業制度はまだまだ過渡期なのです。
国が進める「かかりつけ薬局・薬剤師制度」も、薬剤師の質的向上が日本の医療の質を高めると期待して進められているのに、池田氏の発言は時代錯誤も甚だしいです。
薬剤師は有害無益な免許の最たるもの。今や処方箋に書かれた薬を売るだけの仕事に、なんで免許が必要なのか。ところがナンセンスな規制ほど、それを守る業界の政治力が強い。
— 池田信夫 (@ikedanob) 2017年6月4日
薬剤師なんか資格認定で十分。薬学部に6年も行かなくても、処方箋の通り薬を出すのはバイトでもできる。ゼロリスクを求める人は、資格をもつ(高い)薬局で買えばいい。 https://t.co/xrW7uO44Ld
— 池田信夫 (@ikedanob) 2017年6月4日
薬剤師は処方箋通りに薬を売るだけ――もう薬剤師批判のテンプレのような意見ですね。
薬剤師は処方箋通りに調剤しているわけではありません。
用法用量・適応症・禁忌薬・禁忌疾患・薬物間相互作用などをチェックした上で、問題なければ処方箋通りに調剤しています。
池田氏の意見は、「医師は処方を間違えない」という妄想が前提になっているのでしょう。
医師は自身の専門領域はもちろんのこと、専門外の医薬品の効能・性質・薬物間相互作用のリスクを熟知していてミスを犯さない――そんな人間がいたらもはや神ですよ。
日本にはどれほどの医薬品が発売されていると思いますか?
約18,000種類です。
高齢者ほど複数の診療科を受診し、10種類以上の薬を服用していることも少なくありません。
薬剤数が増えれば副作用・薬物間相互作用のリスクも跳ね上がります。
腎機能・肝機能が低下していれば、さらにリスクは高まります。ポリファーマシーの問題も見逃すことはできません。
数えきれないほど存在する我が国の医薬品――これらの安全管理がトレーニングを受けてない人に務まると思いますか?
コンビニのバイトが処方箋医薬品をホイホイ出す国なんで恐ろしくてとても住みたくないですよ。。
先進国のどこにそんな国があるのか、池田氏に聞いてみたいですね。
薬剤師がまだゴチャゴチャいってくるが、これは獣医より存在価値が低い。今は「調剤」なんかしないんだから、コンビニの店員が処方箋どおり売れば十分。|薬剤師の政治力はなぜ強いのか https://t.co/R3lUh9h4De
— 池田信夫 (@ikedanob) 2017年6月5日
たぶんこれは、中世ヨーロッパで行われていた薬の調合を「調剤」とイメージしているのでしょう。
医薬品の品質が向上した現代では、調剤の意味は変わっていますよ。
池田氏のツイートに対して多くの反論意見が寄せられているようです。
中には建設的な討論をしようとする薬剤師さんもいるようですが、ことごとくブロックされています。
反論意見、気に入らない意見は即ブロック!
みんな「池田信夫チャレンジ」に参加しよう!
(これが大人のすることですか。池田センセイ…)
しかし、私は彼にどれだけ正論を述べても伝わらないと思います。
なぜなら、池田氏は医療を市場原理主義で考えているからです。
「なぜ薬剤師は生産性が低いのに政治力が強いのか」という問いは誤っている。彼らは生産性が低いから政治力が強いのだ。|薬剤師の政治力はなぜ強いのか https://t.co/t0kak5XQUO
— 池田信夫 (@ikedanob) 2017年6月5日
生産性という言葉にそれが現れていますね。
市場原理主義とは、簡単に言えば「市場に任せればすべて上手くいく」というものです。
つまり、政府が市場に介入せず、すべて「売り手」と「買い手」に任せる。それぞれ自己の利益を最大化するために振舞い、好き勝手やっていい。その代わり完全自己責任でヨロシク。
それが市場原理主義です。
「処方どおりに薬を渡す」仕事はあるでしょうが、それは「衛生管理に気をつけて食物を提供する」仕事と同じ。「薬剤資格」はあってもいいが、業務独占は必要ない。厚労省の規制さえなければ、今後はネットで代替されるでしょう。 https://t.co/QKErCLr39b
— 池田信夫 (@ikedanob) 2017年6月6日
薬剤師の業務独占をなくせ。規制を緩和し、処方箋は誰でも調剤できるようにしろ。みんな自由に医薬品を売買できるようにしろ。そうすればもっと医療はよくなる――そう考えているのではないでしょうか。
しかし、それをさせないために薬機法があり薬剤師がいるのです。
確かに薬剤師は薬を売らなければ食っていけませんよ。
ただし、医薬品の販売よりも大事な責務があるのです。
それが「薬の適正使用」です。
薬剤師の責務は医薬品のリスクマネジメントなのです。
薬の適正使用を促し、リスクを未然に防ぐ――ブレーキの役割として薬剤師が存在しているのに、生産性とかで論じられても話がかみ合うはずがありません。
スーパーやコンビニ、ネットで自由に調剤、医薬品販売ができるようになれば、価格で薬局は勝てない。だから独占業務にして必死に利権を守っている――たしかに、池田氏の言うように薬剤師の独占業務(特に調剤)は、大きな参入障壁となっています。
独占業務により薬剤師の職は守られていることは間違いありません。就職先にも困りませんしね。。
しかし、独占業務を守ることは処方箋医薬品の安全を守るためでもあるのです。
処方箋医薬品は市販薬よりさらに薬効が強く発現するため、取り扱いに注意を要します。それを誰でも自由に売買できるようになれば、おそらく日本に薬物乱用が蔓延しますよ。
「クスリはリスク」と言われるように、取り扱いを間違えれば最悪患者を死に至らしめます。
衛生管理に気をつけて食物を提供する仕事と同じ――こんな考えの人間がコンビニで薬を売る世の中になれば、どれだけの有害事象が発生するでしょうか。
「リスクある医薬品を、トレーニングを受けた薬剤師がしっかり管理する」これは理にかなっていると思いますが。
ネットの世界には、すでに「完全自己責任の医薬品市場」があります。
それが医薬品違法サイトです。
こういったサイトは個人輸入代行サービスと称して、外国から医薬品を仕入れ売りさばきます。
サイトをみてみると、不眠症治療薬、統合失調治療薬、降圧剤など、日本なら医師の処方なしでは絶対に入手できない薬が普通に売られています。
ラミクタールのジェネリックが買えると知って、私は腰を抜かしそうになりました。用法・用量を間違えれば死にますよ。。
※ラミクタール添付文書・警告 より
「あなたが欲しい薬はすべて売りますよ。でも何が起きても責任は一切もちません」
そんな国にあなたは住みたいですか?
「100%」である必要はない。ゼロリスクを求める人は「薬剤資格者」から薬を買い、普通の人はネットやコンビニで(安い)薬を買えばいい。劇薬や毒物の取り扱いは、別の法律で規制されている。 https://t.co/Voo9gQ43ze
— 池田信夫 (@ikedanob) 2017年6月6日
リスクのあるなしをユーザー自身に決めさせて、有害事象が発生したら自己責任ですか。
大変な世の中になりますね。
医薬品を扱うには知識・経験はもちろんのこと、正しい倫理観が求められます。
使用者の安全を考えれば売るべきではない――市場原理主義にとらわれず、医療人として正しい判断ができる薬剤師を養成するために薬学部があり、薬剤師国家試験があるのです。
そう考えれば薬剤師免許、独占業務は意味があるといえるのではないでしょうか。