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本当に辛い!一人薬剤師の現状
発言小町に、ある薬剤師さんが投稿していました。
「一人薬剤師でもう肉体的にも精神的にも限界です」というもの。
これを読んで私は心の底から思いましたよ。
(分かる!分かるわーあなたの気持ち。辛いよね、ホントに辛いよね……)
私もドラッグストア時代に、一人薬剤師で多くの辛酸をなめてきました。
経験者でないとイメージできないと思いますが、かなり大変なのです。
サイト管理人の私は、薬剤師の転職相談にのっています。
その中で結構多いのが「一人薬剤師が辛くて…」というもの。
新卒2年目でやむにやまれず一人薬剤師になってしまった病院勤務の方もいました。みなさん苦労されてますねー。
一人薬剤師の辛いところは「自分の代わりがいない」ということです。
何があっても出勤しなければなりません。私がメール相談を受けた女性は、38度の熱があるにも関わらず点滴を受けて出勤したそうです。
いやいやさすがにこれはやりすぎでしょ。自分の異常な行動に早く気づけー!
「一人薬剤師は辛すぎる。でも仕方ない。私に課せられた使命だから…」
いやいやちょっと待ってください。それ相当危険な考えですよ。
一人薬剤師は過酷すぎます。
スキルアップの点から見ればメリットもありますが、調剤過誤などのリスクのほうが大きい。
今すぐ現状を客観的に見つめなおしたほうがいいです。取返しのつかないことになりますよ。
また、基本的に「一人薬剤師」は我慢していても解決しません。
会社の都合で薬剤師に負担を強いていることがほとんどなので、個人の努力でなんとかできるものではないのです。
この記事は、まずなぜ一人薬剤師は辛くてリスキーなのか?という実態について説明します。
自身の経験や相談内容をかなり詳しく盛り込んだつもりです。
ただ、一人薬剤師にはメリットもあり、経験者には実は最高の働き方だったりします。
さらに、どうしたら一人薬剤師から脱出できるのか?についても紹介しています。
ぜひ参考にしてみてください。
調剤はただ薬を袋にいれるものではありません。
袋に入れて患者さんに渡すまでに、薬剤師はその専門性を用いて様々な業務を行います。
調剤業務の流れを簡単に言えば「処方せんのチェック(アンケートによる患者の現状確認)→処方内容の入力→調剤→監査→服薬指導→薬歴を書く」です。
でもその一つ一つは、細かい知識が要求されかつミスできないものなのです。
ets・・・・
パッと思いつくだけでもこれだけのチェック事項があります(薬局によってさらに細かいルールがあるところも)。
通常これらの業務は、複数の薬剤師で分担するものです。
しかし、やむにやまれず一人薬剤師になってしまった場合、これらすべてを自分で行わなければなりません。
疲れた頭で調剤業務のすべてをミスなく行うのは、とても大変な仕事なのです。
薬剤師が調剤業務で一番怖れるのは「調剤過誤」です。
こういった調剤過誤を防ぐため、日夜頑張っているわけです。
その方法として一番効果的なのが「処方鑑査によるダブルチェック」です。
調剤された薬を、調剤者と別の薬剤師がチェックすることでミスを発見するわけです。客観的な視点で監査することは、ミスを防ぐ上で非常に効果的です。
しかし一人薬剤師の場合、自分の調剤した薬を監査してくれる薬剤師がいません。
もう一度自分で調剤したものをチェックしなければならないわけです。
何件もの調剤をこなして患者対応もし、疲れきった頭でミスが発見できるでしょうか?
客観的に監査をすることができるのでしょうか?
私の経験上、もっとも辛いのはこれです。
マルチタスク――つまり、複数の仕事を同時にこなさなければなりません。
調剤業務に集中できるならまだいいですが、ドラッグストアの場合は一般のお客様もいます。
調剤業務の合間にOTC医薬品の相談にのり、終わったと思ったら電話がかかってくる。なかなか調剤に戻れず、さらに患者が処方せんをもってくる……なんてことは日常茶飯事です。
調剤業務は集中力が要求されるため、他の業務が割り込んでくることで調剤過誤のリスクが上がってしまいます。
一人薬剤師の場合、どうしても調剤に時間がかかります。つまり、患者さんにお待ちいただくケースが増えるわけです。
患者さんは「調剤なんて袋に薬を詰めるだけでしょ」と思っておられる方がほとんどではないでしょうか。
処方せんを受け取ったとき「今日は私一人でして少しお時間をいただきますが……」と説明するのですが、あまりにもお待たせするとクレームになります。
さらに患者さんが増えてくると、もうクレームの嵐ですよ。
ピリピリムードの中、調剤、監査を一人でこなす辛さときたら…
一人薬剤師でも休憩時間はあります。
ただこれは建前上あるだけで、ほとんど機能してません。自分しか薬剤師がいないのに、患者さんが来たとき「いまお昼ごはんだからちょっと待っててね」なんて誰が言えましょうか。
「一人薬剤師の休憩時間」なんてもはや都市伝説ですよ。
ほとんど休みなく同時並行で仕事を行わなければならない状態。
朝から晩までフルスロットルのアクセル踏みっぱなし。息つく暇もありません。
調剤過誤に怯えつつ、休憩も満足にとれない状態は、精神が休まりません。常に気を張っている状態です。
汚い話ですが、ひどい時はトイレに行けないことを考慮して介護用のおむつをつけて仕事をしています。
こんな発言も、あながち嘘ではないと思います。
本当にトイレにいく暇もないんですよ……。
一人薬剤師に陥る原因は、ほぼ会社の都合です。
一つは「経費削減」のため。薬剤師の人件費を抑えるため、会社側があえて一人薬剤師にしているケースです。
これは相当悪質です。社員の負担やリスクよりも収益を優先するような会社はすぐに辞めるべきでしょう。
もう一つは単純に「薬剤師が確保できない」ケース。現状、どこの会社も慢性的に薬剤師は不足しています。
地方や中小企業だと、薬局が営業できなくなるくらい切羽詰まっているところもあります。
仕方なく薬剤師さんに負担を強いているわけですが、任されるほうはたまったものではありません。
しかし、一人薬剤師のメリットはあります。
私は20代後半で一人薬剤師を1年経験しました。
志願したわけではなく、会社都合で半強制的にやらされたという状況でした。
泣きたいような思い出ばかりですが、やはり学んだものも多かったです。
また、一人薬剤師には待遇的にもメリットもあります。
通常、調剤業務は複数の薬剤師で分担します。
規模の大きな病院薬剤部だと、錠剤、散剤、液剤、服薬指導と役割分担されているところも多いです。
でも、調剤薬局で一人薬剤師を経験すると、一連の調剤業務をすべて自分で行います。
そのため、処方せん受け取りから患者さんに薬を渡すまでの全体像が把握できるようになるのです。
この経験は、管理薬剤師や薬局経営者になった場合に非常に大きいです。
一人薬剤師は、限界以上の仕事をやらされることが多いです。
キャパシティを超えた仕事をこなすことで、格段にスキルが向上します。
薬剤の用法、用量、薬物間相互作用、服薬方法など、分からないことはすべて自分で調べなければなりません。
医師への疑義紹介もすべて自己判断です。非常に緊張しますが、自分でやるしかない状況は急激に成長します。
やはり人間、ぬるま湯だけでは成長できないのかもしれません。
一人薬剤師は調剤だけでなく、在庫の管理、備品の管理なども行います。
定期的に薬局の収支報告書を本部に送ったりするので、薬局に関わるお金の流れが把握できるようになります。
こういった経営者的視点で薬局をみることができるようになります。
求人の条件に「一人薬剤師」が入っている場合、一般的に年収は上がります。
同じ内容の仕事であっても、50〜100万円以上年収が上がることは珍しくありません。
一人薬剤師の環境は避けられる傾向が高く、経営者は年収を上げざる負えません。
そうしないと薬剤師が来てくれないからです。
薬剤師の年収は結局、経営者との綱引きです。
「地方・中小企業・薬剤師不足」こういった条件に当てはまるほど年収が跳ね上がるのは仕方のないことなのです。
一人薬剤師をやれるスキルと覚悟さえあれば、年収700万円を超えることもあります。
一人薬剤師さんの大きなメリットは「人間関係の煩わしさが少ない」こと。
基本的に自分しかいないので、他人に気を使う必要はありません。慣れてしまえば最高の環境と言えるのではないでしょうか。
ただし、医療事務員など薬剤師以外の職員がいる場合は別です。
調剤併設型ドラッグストアの場合、店長、社員、パートさんとの人間関係もあります。
一人薬剤師は、やはり患者さんに顔を覚えてもらいやすいですよね。
総合病院の門前薬局だと薬剤師が多すぎて埋もれてしまいます。
でも、一人薬剤師ならあなたが薬局長です。自分の薬局じゃないのに「○○さんの薬局」と覚えてくれるのは嬉しいですよね。
一人薬剤師はあなたが薬局の責任者です。
調剤の流れ、在庫の管理などすべてを自分でコントロールできます。
「もっとこうしたい!」と思ったときすぐに実践できるのは大きな強みです。
PDCAを回して薬局業務を改善することができれば、会社への大きなアピールになります。
実は、一人薬剤師という環境は仕事のできる人にとっては、出世を早める大きなチャンスなのです。
これまで解説したように、一人薬剤師はメリットもデメリットもあります。
決して悪い部分だけではありません。
しかし、一人薬剤師はすべて自分で判断しなければならないため、豊かな経験とスキルが必要です。
つまり経験者向けの仕事なのです。
当然、調剤過誤などのリスクは高めで、精神的・肉体的にかなり疲弊します。新人薬剤師にはやはりオススメしません。
私はキャリア10年の薬剤師ですが、それでも一人薬剤師は敬遠します。高い給料よりも安心して暮らしたいですから…
結論から言うと「職場(会社)を変える」しかありません。
つまり、転職です。
私の経験や友人知人の例をみていても、会社に相談して解決したというケースはありませんでした。
「私が辞めたら会社に迷惑がかかる…」そう考えている薬剤師さんも多いではないでしょうか。
一人薬剤師で耐えている方は、責任感が強い人が多いです。
しかし、あなたがすべてを背負う必要はありません。
そもそも、一人薬剤師の体制を改善しない会社が悪いのです。
「薬剤師が確保できない」というのは言い訳でしかありません。
「会社の利益のために、一人の薬剤師を使い倒す」という経営の在り方は、ブラック企業そのものだと思います。
一人薬剤師に耐え続けるのは美徳でもなんでもありません。
「一人薬剤師はもう限界」「忙しすぎて疲れがとれない」など悩みが深かったり、「プライベートを大事にしたい」という思いがあるなら、もう環境を変えたほうがいいです。
自分で動く以外に解決方法はないのですから。
一人薬剤師を避けられるかどうかは、ほぼ会社選びにかかっています。
人事環境は日々変わっていくので絶対大丈夫とはいえませんが、下記の条件は必ず確認しておきましょう。
一人薬剤師に陥る大きな原因は「薬剤師不足」です。
つまり、薬剤師を採用する能力が高い会社のほうが、一人薬剤師のリスクを減らすことができます。
中小企業か大手で迷ったら、やはり大手のほうが安心です。
クオール、スギ薬局など大手薬局チェーンは全国に店舗を持ち、多数の薬剤師を保有しています。
店舗間で助け合うシステムがあるので、当然薬剤師不足を解消する能力も高いです。
一方で、数店舗しかない中小企業、小規模病院などは、薬剤師が数人退職するだけで突然薬剤師不足に陥ります。
大手よりも給料は良い場合が多いですが、一人薬剤師のリスクは高いです。
レセコンの入力、在庫管理を行うことのできる医療事務員がいるかどうかはかなり大きいです。
優秀な医療事務員がいれば、薬剤師の負担をかなり減らすことができます。
会社の方針として医療事務員を積極採用しているか、育成する環境があるのかをしっかり調べておきましょう。
法的に、薬局に薬剤師を配置しなければならない人数が決められています。
例外はいくつかありますが、「1日の処方箋40枚当たり1人薬剤師を置くこと」と制限されています。
調剤はミスが許されないので、一人で100枚も300枚も仕事をするのを防ぐ目的もあるでしょう。
しかし、私の感覚的には一人でレセコンから調剤(時に疑義紹介)、服薬指導もこなして40枚はかなり大変です。ヘトヘトです。
1日20枚でもヒーヒーというイメージです。
医療事務員、アシスタントなど薬剤師以外の助けがあれば楽になりますが、やはり「自分なりの限界」を設定しておくべきでしょう。
あまりにも無理な調剤をさせていないかどうか、必ず調べておきましょう。
ただ、上記のことを個人で調べるのは相当大変です。知り合いでもいない限り、会社の内部事情はなかなか入ってきません。
当たり前ですが、転職コンサルタントから情報は得ておきましょう。
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