低血圧症と起立性低血圧症
高血圧ばかりが騒がれる世の中ですが、低血圧もまたやっかいな病気です。
低血圧の患者は人口の1〜2%といわれています。生活に支障をきたしているようなら、きちんと治療しなければなりません。
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低血圧症の診断基準
安静時血圧が90〜100/60〜70mmHg以下で、日常生活に支障が生じている場合、低血圧と診断されます。
低血圧症の種類
本態性低血圧症
原因が明らかでないものです。
きちんと検査しても原因となるような疾患がなく、自覚症状もなく生活に支障がない場合は、特に治療は必要ありません。
症候性(二次性)低血圧症
低血圧の原因がはっきりしているものです。
低血圧は、疾患(糖尿病、心不全、不整脈、脱水、貧血など)、怪我による出血など様々な原因により引き起こされます。
また、薬の副作用によって低血圧が生じているケースもあります。
α1遮断薬 | ミニプレス(プラゾシン塩酸塩)、デタントール(ブナゾシン塩酸塩)、カルデナリン(ドキサゾシンメシル酸塩)など |
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αβ遮断薬 | トランデート(ラベタロール塩酸塩)、アーチスト(カルベジロール)、ローガン(アモスラロール塩酸塩)など |
Ca拮抗薬 | アダラート(ニフェジピン)、ヘルベッサー(ジルチアゼム塩酸塩)、ノルバスク(アムロジピンべシル酸塩)など |
利尿薬 | ラシックス(フロセミド)、アルダクトンA(スピロノラクトン)、フルイトラン(トリクロルメチアジド)など |
抗うつ薬 | トフラニール(イミプラミン塩酸塩)、テトラミド(ミアンセリン塩酸塩)など |
抗精神病薬 | セレネース(ハロペリドール)、コントミン(クロルプロマジン塩酸塩)、ノバミン(プロクロルペラジン)など |
抗パーキンソン病薬 | ドパストン(レボドパ)、パーキン(プロフェミナン)、シンメトレル(アマンタジン塩酸塩) |
抗てんかん薬 | テグレトール(カルバマゼピン)、デパケンR(バルブロ酸ナトリウム)など |
硝酸薬 | ニトログリセリン、ニトロール(硝酸イソソルビド)、フランドル(硝酸イソソルビド徐放剤)など |
起立性低血圧症
起立時に収縮期血圧が20mmHg以上低下するものです。
起立性低血圧の患者は、椅子などから急に立ち上がると、めまい、立ちくらみを起こします。
人間は立ち上がると重力によって血液の一部が体の下部に残ります。そのため、心臓へ戻る血液量が減少し心拍出量が低下し、血圧がさがります。
健常人ならすぐに体が血圧を上げるように作動するのですが、起立性低血圧の人はこの機能が上手く働きません。そのため、脳に血液が足りなくなり、めまい、ふらつき、たちくらみといった症状が起こるのです。
低血圧症の治療対象
低血圧症の治療方針は「生活に支障が出てない場合は治療はしない」のが基本です。
しかし、ふらつき、めまい、全身倦怠感などで日常生活に支障がでている場合は、治療対象となります。
まず、食事、睡眠などの生活習慣を改善し、症状が改善されなければ薬物治療を検討します。
生活習慣の改善
低血圧治療は、生活習慣の改善を第一に考えます。
就寝・起床の時間、食事のリズムが崩れていることが多いので、まずここを改善します。
食事の改善点は
- 水分をしっかりとる
- 食塩(20g/日程度)
- タンパク質を多めの食事
が重要です。体液の量を増やすことで血圧を上昇させます。
また、朝食をしっかり摂ることも大事です。食事のメニューは大事で、タンパク質多めを意識します。とくに食後に低血圧になるような人は、炭水化物少なめでタンパク質多めの食事を摂るとよいとされています。
ウォーキングなど軽度で規則正しい運動がよいとされ、弾性ストッキングや弾力性下着を身につけるのも効果があります。
早朝にコーヒー、紅茶などのカフェインを摂ることも、低血圧によいとされています(※ただし過剰摂取は危険)。
お酒の飲み過ぎ、長風呂は低血圧によくないので控えます。
低血圧症の薬物治療
めまい、立ちくらみなどの症状が強く生活に支障があり、生活習慣の改善だけでは効果がない場合は、薬物治療が検討されます。
低血圧治療に使われる薬には
- 昇圧薬
- 自律神経調整薬
- 抗不安薬・抗うつ薬
があります。
血圧を上げるために昇圧薬を使うのは基本です。
また、低血圧患者の中には不安感・食欲不振・不眠などを訴える人もいるため、抗不安薬・抗うつ薬もセットで処方されることがあります。
さらに、頭痛、腹痛、めまい、発汗など自律神経の乱れが原因と考えられる症状には、自律神経調整薬も使われます。