抗凝固薬の種類と特徴

抗凝固薬の種類と特徴

抗凝固薬の種類と特徴

心房細動や肺塞栓症は、詰まった血管とは別の場所で血栓が形成され、それが血流にのって病巣部へ運ばれることで発症します。

 

このような疾患の場合、血液の流れが滞ることで凝固系が亢進することが原因と考えられています。

 

抗凝固薬は、凝固系の様々な因子に作用することで、血栓形成の最終産物であるフィブリンの産生を阻害することで、抗凝固作用を示します。

 

抗凝固薬

「ヘパリン」
  • ヘパリンナトリウム(ヘパリンナトリウム)

 

「低分子ヘパリン」
  • フラグミン(ダルテパリンナトリウム)
  • クレキサン(エノキサパリンナトリウム)

 

「ヘパリノイド」
  • オルガラン(ダナパロイドナトリウム)

 

「クマリン系」
  • ワーファリン(ワルファリンカリウム)

 

「トロンビン直接阻害薬」
  • プラザキサ(ダビガトランエトキシラートメタンスルホン酸塩)

 

「合成Xa阻害薬」
  • アリクストラ(フォンダパリヌクスナトリウム)……シリンジのみ

 

「経口直接Xa阻害薬」
  • イグザレルト(リバーロキサバン)
  • エリキュース(アピキサバン)
  • リクシアナ(エドキサバントシル酸塩水和物)

 

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抗凝固薬の作用機序

 

主な抗凝固薬の作用機序

 

抗凝固薬

 

抗凝固薬は、凝固系の様々な因子に作用しますが、目的は一つです。

 

それは、凝固系の最終産物であるフィブリンの産生を阻害することです。

 

ヘパリン

 

経静脈投与の抗凝固薬として代表的な薬です。

 

ヘパリンは、アンチトロンビンVと結合し効果を発揮します。アンチトロンビンVは凝固因子の酵素活性作用を抑制する物質であり、ヘパリンはこの物質と結合することで、血液凝固因子Ua、]a、Za、\a、]Ta、]Uaの活性を阻害します。
※ ]aとは「第]因子の活性型」という意味。

 

低分子ヘパリンとヘパリノイドは、ヘパリンよりも出血のリスクが少ないとされています。

 

ヘパリン投与による大量出血には、プロタミン硫酸塩(商品名:ノボ・硫酸プロタミン)を使います。

 

ワーファリン

 

ワーファリンは半世紀にわたり、唯一の経口抗凝固薬として使われてきました。

 

多くのエビデンスがあり、抗凝固薬の主役とも言える薬です。

 

血液凝固因子の中で、U(プロトロンビン)、Z、\、]因子は肝臓で合成されます。これらの因子は、ビタミンK依存性血液凝固因子と呼ばれ、合成にはビタミンKが必要です。このビタミンKと拮抗して抗凝固作用を示すのがワーファリンです。

 

また、ワーファリンによって血中に遊離するPIVKA ( Protein induced by Vitamin K adsence or antagonist : プロトロンビン前駆体 )
が増加することにより、抗凝固作用と血栓形成抑制作用を示します。

 

ワーファリンはプロトロンビン時間のINR値(PT-INR)を検査しながら投与量を調整していきます。
そのため、投与量の調整が面倒ともいわれます。

 

 

トロンビン直接阻害薬(プラザキサ)

 

プラザキサは、トロンビンを直接阻害する経口薬です。

 

トロンビンは、フィブリノーゲンからフィブリンを産生する触媒作用をもつため、トロンビンの活性を阻害することで、血液凝固を防ぐことができます。

 

プラザキサはプロドラッグのダビガトランエテキシラートとして経口投与後、消化管から吸収され、活性代謝物のダビガトランに変換されます。

 

ダビガトランは血中のトロンビン活性部位に結合し、その活性を直接阻害します。

 

 

Xa阻害薬

 

血液凝固系でトロンビンの他に重要となるのが、第]因子です。

 

第]因子は活性化されて]aとなります。この]aは、Ca(2+)、血小板第3因子存在下で第X因子と複合体をつくります。この複合体をトロンボプラスチンといいます。

 

このトロンボプラスチンは、酵素作用によりプロトロンビンを分解してトロンビンとします。

 

経口直接Xa阻害薬であるリクシアナ(エドキサバントシル酸塩水和物)、イグザレルト(リバーロキサバン)、エリキュース(アピキサバン)は、]a因子の活性化部位を直接的に阻害することで、トロンビンの生成を阻害し、抗凝固作用を発揮します。

 

なお、合成Xa阻害薬と言われるアリクストラ(フォンダパリヌクスナトリウム)は、シリンジのみであり、皮下注で投与します。

 

抗凝固薬の薬物動態

商品名 プラザキサ イグザレルト エリキュース リクシアナ
標的因子 トロンビン ]a因子 ]a因子 ]a因子
投与回数 T日2回 1日1回 1日2回 1日1回
モニタリング 不要 不要 不要 不要
生物学的利用率 6% 80% 50% 50%
t1/2(hr) 12〜17 5〜9 12 9〜11
腎排泄 80% 33% 25% 35%
薬物相互作用 P-糖タンパク阻害薬

CYP3A4阻害薬
P-糖タンパク阻害薬

P-糖タンパク阻害薬

CYP3A4阻害薬
P-糖タンパク阻害薬

薬局 第64巻 第2号 p28 一部改変

 

ワーファリン

 

ワーファリンは昔から抗凝固薬の主役とされてきましたが、いくつかの問題もあります。

 

まず、投与量の調整の難しさです。

 

ワーファリンの投与量は、PT-INRが1.5〜2.5になるように調節していきます。

 

しかし、、維持量には10倍以上の個人差があるため、患者の状態をみながら微調整を繰り返さなければなりません。

 

原因は、ワーファリンの代謝酵素であるCYP2C9、ワーファリンの薬理作用の過程にあるビタミンKエポキシド還元酵素複合体の遺伝子多型によるとされています。

 

また、薬効発現までの長さも問題です。

 

ワーファリンは内服開始から効果の発現に3〜5日、安定した効果が発揮されるまでに7〜10日間かかると言われています。そのため、投与開始初期には他の治療法を併用しなければならないケースもあります。

 

プラザキサ(ダビガトランエトキシラートメタンスルホン酸塩)

 

トロンビン直接阻害薬として登場したプラザキサの特徴は、薬効発現の早さです。

 

ワーファリンの3〜5日と比べて、プラザキサは0.5〜2時間で血中濃度のピークとなります。

 

そのためワーファリンのようにPT-INRなどのモニタリングを頻回に行う必要がなく、投与量の管理がしやすいという利点があります。
※ただし、時々はトロンボプラスチン時間(APTT)を測定しなければならない。

 

ただし、プラザキサの80%は腎臓から排泄されるため、中等度の腎機能障害から減量を考慮しなければなりません。 

 

クレアチニン・クリアランス30mL/min未満の透析患者を含む高度腎障害には禁忌とされています。

 

イグザレルト(リバーロキサバン)

 

イグザレルトの特徴として注目すべきは、生物学的利用率(バイオアベイラビリティ)が80%であることです。

 

つまり投与した薬のほとんどが薬効を示すため、服用量を少量にでき、剤形を小さくできます。大きな錠剤を飲めない患者にもやさしい薬といえます。

 

この特徴は、患者の個体差による血中濃度の変動が少ないことにも貢献しています。

 

また、投与回数は1日1回であり、服用が楽です。

 

イグザレルトは、抗凝固作用と出血などの副作用のバランスを考えた場合、ワーファリンやプラザキサより安全域が大きいことが報告されています。

 

ただし、イグザレルトは腎排泄が66%と高いため、中等度の腎障害から減量が必要となります。

 

エリキュース(アピキサバン)

 

エリキュースは1日2回投与で、一定量を投与します。
薬物動態が予測可能であるため、ワーファリンのように検査値をモニタリングする必要はありません。

 

リクシアナ(エドキサバントシル酸塩水和物)

 

リクシアナは吸収が早く、1〜2時間で最高血中濃度に達し、バイオアベイラビリティは50%以上です。

 

投与回数は1日1回でOKです。

 

約35%が腎臓から排泄されますが、腎排泄率はプラザキサ、イグザレルトより少ないです。
ただし、中等度の腎障害から減量が必要となります。

 

抗凝固薬の相互作用

ワーファリン

 

ワーファリンは食物や薬との相互作用が多いことで有名です。

 

ビタミンKを多くふくむホウレンソウ、納豆、クロレラなどにより、作用が減弱してしまうのです。

 

また、ビタミンK製剤であるグラケー(メナテトレノン)との併用は禁忌とされています。

 

さらに、抗リウマチ薬であるイグラチモド(商品名:ケアラム、コルベット)との併用でワーファリンの作用が増強される場合があるため、併用禁忌とされています(機序不明)。

 

プラザキサ

 

プラザキサはワーファリンと比べて、食物や薬との相互作用は少ないとされています。肝薬物代謝酵素P-450による代謝を受けないからです。

 

しかし、P-糖タンパク質の基質であるため、P-糖タンパク質を阻害する薬であるイトラコナゾールとの併用は禁忌とされています。

 

また、ベラパミル塩酸塩、アミオダロン塩酸塩などのP-糖タンパク質阻害薬とは併用注意となっています。

 

イグザレルト(リバーロキサバン)

 

イグザレルトは主にCYP3A4で代謝され、P-糖タンパク質の影響を受けます。
そのため、アゾール系抗真菌剤(イトラコナゾール、ボリコナゾール、ケトコナゾール)との併用により血中濃度が上昇することがあるため、併用禁忌とされています。

 

ただし、薬物相互作用はプラザキサより弱いため、ベラパミル塩酸塩、アミオダロン塩酸塩との併用も可能です。

 

エリキュース(アピキサバン)

 

エリキュースは食物との相互作用はなく、薬物相互作用も少ないです。

 

主にCYP3A4により代謝され、P-糖タンパク質の基質となりますが、併用禁忌となる薬はありません。

 

リクシアナ(エドキサバントシル酸塩水和物)

 

リクシアナはCYP3A4の代謝を受けますが、その割合は投与量の10%未満です。
P-糖タンパク質の影響を受けますが、その影響は小さいため、併用禁忌とされる薬はありません。

 

抗凝固薬の副作用

 

抗凝固薬の共通の副作用は「出血」です。

 

薬理作用が効きすぎたことによる副作用なので、最も出現頻度が高いものと言えます。

 

プラザキサはワーファリンと比べて、頭蓋内出血の発現率を抑制するといわれています。
しかし、消化不良の副作用が高いことが特徴的です。

 

また、プラザキサはワーファリンに比べて、低用量では大出血の副作用が著しく減少するとされています。

 

イグザレルトは、ワーファリンと比べて頭蓋内出血、消化管出血の頻度が少ないとされています。

 

リクシアナの副作用で気になるものは、肝機能以上です。1〜10%未満と幅がありますが、他と比べて高い傾向にあります。

 

ワーファリンと比較したプラザキサの特徴 利点と欠点 まとめ

 

プラザキサは発売当時「ワーファリンにとって代わる抗凝固薬」として騒がれました。

 

しかし、臨床試験より多くの患者に投与されるようになってから、高齢者や腎障害患者への使いづらさ、胃腸障害の副作用、薬価の高さなど、問題も出てきています。

 

ワーファリンと比較したプラザキサの利点と欠点をまとめておきます。

 

「利点」
  • ワーファリンと比べて食物の影響が少なく、薬物相互作用のリスクも格段に減少した。
  • 毎回採血してPT-INRなどのモニタリングをする必要がない
  • 2時間で最高血中濃度に達するため、効果発現が速やか。
  • 用量が固定されているため、ワーファリンのように検査値をモニタリングしながら用量決定する必要がない。
  • ワーファリンと比べプラザキサ高用量では、虚血性脳卒中が有意に減少する。
  • 頭蓋内出血の発現率は、ワーファリンと比べて著しく低い

 

「欠点」
  • 腎障害患者(クレアチニン・クリアランス30mL/min未満)には投与できない
  • ワーファリンの1日1回服用に対して、1日2回服用であること(コンプライアンスの低下)
  • 胃腸障害の副作用が高い

薬局 第64巻 第2号 p35〜36 参考

 

手術前の抗凝固薬の中止はどうするか

商品名 中止時期の目安
ヘパリンナトリウム プロタミン投与で中和可能
ワーファリン 3〜5日前
プラザキサ 1〜2日前
イグザレルト 24時間前
エリキュース 2〜4日前

 

休薬期間は手術の危険度、患者の検査値の状態、薬の作用の可逆性など様々な要因が影響するため、一概には言えません。

 

上図は、だいたいの目安となります。

 

ただし、プラザキサは重度の腎排泄があり、出血リスクの高い手術を行う場合は、休薬期間は4日が推奨されています。

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