病院薬剤師が医師に処方提案するときに注意したい3つのポイント

処方提案

 

病院薬剤師は調剤薬局やドラックストアで働いている薬剤師よりも、ずっと多く処方提案する機会があります。

 

重要かつ必要な仕事ですが、処方提案をするときに不安な気持ちになることはありませんか?それは自分の提案に自信がないから、そして医師へ意見を言うことに対して抵抗があるから、ではないでしょうか?

 

この記事では処方提案における基本的な考え方や注意してほしいことを私が経験した事例を含めてポイント毎にお伝えします。

 

薬剤師としてなんのために処方提案を行うか

アウトカム

 

薬剤師は薬の専門家です。医師は自分の専門分野以外の薬には造詣(ぞうけい)が深くないことが多く、あまり頓着がないように感じます。

 

そこで薬剤師として処方提案はなんのために行うか考えてみました。

 

A.禁忌や併用禁忌などを避けるため

まず禁忌や併用禁忌、慎重投与などの添付文書に載ってある内容について処方提案を行う場合です。薬剤における禁忌や併用注意はたくさんありますが、病院では注射剤にも気を付けなければなりません。

 

例えばジゴキシン注を使用している患者のカルシウム値が低く、カルシウム注射が静注指示で新しく処方された事例がありました。これは添付文書にもあるようにジゴキシン注とカルシウム注射は原則禁忌となっており、処方提案する対象となります。このような事例は病院によっては調剤鑑査システム等でエラーがかかるところもあると思います。

 

また、調剤鑑査システムは薬の併用においてエラーが発生する事があっても、病態と薬剤の禁忌事項にはエラーが発生しないものがほとんどではないでしょうか。
糖尿病の患者にMARTAが処方されていたり、甲状腺機能低下症の患者にジアスターゼ・生薬配合剤が処方さていたりと、調剤監査システムを当てにしていると思わぬ落とし穴にはまるかもしれません。

 

当たり前のように使っている薬も実は知らない禁忌や警告などものでありますので、どんな薬でも添付文書を見る癖をつけましょう。

 

B.副作用を回避・改善するため

副作用を回避するためには検査値を確認することが大事になります。腎機能や肝機能が低下している時に副作用が起こりやすくなるため、薬剤の変更や減量の提案をする必要があります。添付文書に減量規定が載っていることもあるので確認しましょう。

 

また薬剤性腎障害診療ガイドライン日本腎臓薬物療法学会のホームページなどに腎機能低下時に注意が必要な薬剤の投与量一覧がまとめてあるので活用してみてください。

 

検査値の中でもクレアチニンクリアランスeGFRを腎機能の指標として確認することが多いと思いますが、腎機能を確認する際の注意点として検査値で提示されたクレアチニン値をそのまま鵜呑みにしないことです。

 

クレアチニンという物質は、クレアチンリン酸という筋肉が運動するためのエネルギー源が代謝されたあとにできる老廃物です。クレアチニンは腎臓でろ過されて尿として排出されるため、クレアチニン値の上昇は腎機能が低下していることを意味します。

 

ただ、そのクレアチニン値は筋肉量に比例するため、若く筋肉質である患者と寝たきりで痩せている患者とでは同じクレアチニン値だとしても腎機能の評価が異なってきます。

 

また、病態によって脱水状態で入院してくる患者もいます。脱水状態だとクレアチニン値が高く反映され、正確な腎機能を評価することは難しいため、患者の状態を見極める必要があります。

 

また、薬効からあまり結びつかないのですが、意外と起こる副作用もあります。

 

例えばH2ブロッカーでせん妄等の精神症状が出たり、PPIで慢性的な下痢が続く、ということがあります。薬理作用で考えれば、脳にはH2受容体が複数存在しているためH2受容体の遮断が精神錯乱に関与している可能性が高いと言われていますし、PPIの下痢は膠原性大腸炎という病気を発症している可能性があり、大腸のプロトンポンプを阻害することで大腸粘膜の組成やpHが変化し、粘膜の炎症や組織修復性の膠原線維が沈着すると言われています。

 

知っていると、可能性の一つとして考えられ薬剤変更の処方提案につながり、副作用の改善を図る事もできます。

 

C.ポリファーマシーを防ぐため

近年日本では医療費が年々増大しており、薬剤費も大きな原因となっています。ポリファーファマシー対策が求められ、適切かつ必要な薬剤を見定めるには薬剤師としての知識が必要であります。ポリファーマシーを防ぐためならなんでもいいからとにかく減薬すればいい、というわけではありません。

 

他院で処方されている薬は特に変更したくない、という医師も多いと思われます。そこで、まずは重複しやすくまた患者にとって必要かどうか聞き取りにて確認できやすい薬から手を付けてみましょう。鎮痛剤や胃薬、下剤等は比較的検討しやすく、医師も惰性で長期処方していることがあります。

 

また、減薬に関しての考え方を学ぶために「高齢者の安全な薬物ガイドライン」や「STOPP criteria※」」などを参考にするのも良いでしょう。

 

※STOPP criteria:ポリファーマシーと定義される不適切な処方を検出するために海外で用いられている基準(参考資料:STOPP Criteriaを用いた高齢者のポリファーマシーに対する薬剤師による介入

 

関連記事ポリファーマシーとは?薬剤師に求められる役割は?

 

どのタイミングで処方提案を行うか

スケジュール

 

処方提案を行うタイミングは大きくて分けて3つあります。シーン別にみてみましょう。

 

A.入院後の持参薬を確認する時

患者が入院してきた場合、もともと内服していた薬を鑑別し主治医に継続や中止の確認をしますが、その時点が一番提案しやすく、提案を呑んでくれる確率も高いです。特にポリファーマシーを防ぐための提案は入院時から検討し始めると効率的です。

 

また、お薬手帳を確認する際、どれくらいの期間内服しているか、処方元の病院はどこかを確かめられるので、せっかくポリファーマシー対策として減薬の提案をするのですから、薬剤総合評価調整加算の対象となるか確認し、算定できたらなお良いのではないでしょうか。

 

B.服薬指導に入った時

服薬指導に入ると、指導前の準備として電子カルテなどを確認したり、患者本人の訴えを聞けたりと様々な情報を収集すると思います。

 

ハイリスク薬を使用している患者は何をポイントに指導するかは、だいたい決まっています。中でも抗がん剤治療している患者は、抗がん剤治療を繰り返す度にどの時点でどの副作用が出るか浮き彫りになってきます。予防投薬を提案する事も可能であり、副作用を未然に回避できるのではないでしょうか。

 

また、「先生にも看護師さんにも言ってなかったんだけど…」と言って、話してくれる患者や「怒られるかと思ってずっと言えなかった」という患者がいます。私たち薬剤師が聞く姿勢を持って、丁寧に応対する事で得られる情報はたくさんあります。

 

日頃忙しく、時間を割けないとは思いますが、ステレオタイプな質疑応答だけでなく患者ひとりひとりの訴えに耳を傾けましょう。

 

C.検査値を確認した時

検査値の確認は、服薬指導に入った時に見ることが多いと思いますが、定期的に腎機能や肝機能、電解質の推移を確認することも必要です。

 

電子カルテの検索システムを使用して横断的に検査値を確認し、入院時から推移を追い、腎機能や肝機能の低下や電解質異常が確認された場合は薬を再検討しましょう。

 

処方提案のテクニック

薬を持った手

 

処方提案する時のテクニックをいくつか紹介します。役に立ててもらえれば嬉しいです。

 

A.しっかりとした情報収集

処方提案の内容や医師との関係性によっては提案しにくい事もあります。提案する時に根拠を持って提案できるか否か、それが提案するときの自信に繋がると思います。

 

インターネットで検索する際、インターネット上のすべての情報を参考にしても良い、というわけではありません。科学的な根拠に基づいた臨床判断を提示すれば、自分が間違っているかも、と不安に思う事は少なくなります。

 

情報源としては、IFや添付文書、ガイドライン等を確認する事が大切です。また、文献や論文から引用する場合、そのエビデンスレベルや発表された年数なども吟味する必要があります。

 

都合の良い文献を見つけて、それを鵜呑みにしてそのまま医師に提案すると、痛い目にあうかもしれません。その情報の性質を見極めて、取捨選択できる力を培いましょう。

 

B.医師に対しての言い回し

医師に対しては基本的に丁寧な言葉使いで会話する事がほとんどです。関係性が良好であれば、処方提案もスムーズに行えますが、全員が良好な関係になるのは難しいと思います。そこで提案時の言い回しにも気をつけてみましょう。

 

医師が忙しそうにしていて、話を聞くのも煩わしいような状態だったとしても、提案する時に理由を省略して結論のみ伝えることは避けて下さい。医師が考えて処方した内容を是正する事になるので、理由を伝えなければ納得してもらえませんし、第一に処方権は医師にあります。

 

また、医師の処方意図をさぐる時にも「教えて頂きたいのですが」「勉強不足で恐縮ですが」と一言添えると医師の対応も変わってきます。処方意図を確認してもやはり提案する必要があるときに、理由を添えて提案するのが望ましいでしょう。

 

C.病棟の専任薬剤師に頼む

病棟に専任薬剤師が常駐している場合は、専任薬剤師に頼むこともひとつです。専任薬剤師は病棟にいる時間が長いため、医師へ提案するタイミングを図ることができます。

 

また、電話や紙面で提案するよりも会って話した方が医師も耳を傾けてくれます。たまたま機嫌が悪くて提案を聞き入れてもらえない、ということにならないためにも、専任薬剤師に頼んでみましょう。

 

D.看護師を味方につける

医師と長い間一緒に仕事をしている看護師ならば医師との関係は良好であることが多いです。手術や処置などで病棟に来ず、電話でも伝えるタイミングがないときに、紙面を用いた提案を選択する事もあります。

 

ただ、紙面ではうまく内容が伝わらないことがあったり、下手をすると情報不足により誤解を与えてしまうかもしれません。そういうことを防ぐためにも看護師にも提案内容を伝えておくといいでしょう。

 

医師が確認する時に、足りない情報をカバーしてくれることもありますし、看護師も提案内容を把握しておけば変更後もスムーズに確認ができます。

 

医師との良好な関係を築くことも大切ですが、看護師と仲良くすることも自分にとってプラスになります。

 

おわりに

処方提案には責任がついてまわります。その責任を恐れて放棄するのではなく、責任と向き合い、自信をもって処方提案できるよう自己研鑽していきましょう。


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