志の高い薬局経営者の元で働いたほうが良い理由

社長

 

もしあなたが、中小企業の調剤薬局で働くなら、そのボスである経営者をよく観ておくことです。

 

なぜなら「中小企業は経営者で決まる」と言っても過言ではないからです。

 

大企業のように大きな組織は、営業、財務、人事など様々な権限が分譲されているため、一人の人間の意向で会社の方針がガラリと変わる、という状況は少ないです。

 

しかし、中小企業のような小さな組織は、経営者がほとんどの決定権を持つ場合が多いでしょう。つまり、一人の人間の考え方しだいで、会社の方針が決まってしまうのです。

 

これはある意味、とても怖いことです。

 

特に経営者が創業者で、苦労して会社を起こした人なら、会社を私物のように扱うことも少なくありません。
ワンマン体質ですから、彼の方針の是非を問う人間は排除してしまいます。そうなると、会社が間違った方向に進んでいたとしても修正できません。

 

薬局経営者の本音と建前

 

数年前、私は知り合いの経営者にスカウトされたことがありました。
当時、私は長い海外生活から帰国し、大手の調剤薬局で契約社員として働きながら、次の職を探していました。30歳近かったですし、長くやりがいを持って働くことのできる職場を希望していました。

 

その経営者は、私が働いていたドラッグチェーンで知り合った人でした。

 

私が帰国したという情報を聞きつけ、早くもリクルートに来たわけです。

 

昔も今も、地方の薬剤師は慢性的な不足状態。タダで獲得できるなら、よほど問題ある者を除いて、どんな人間でもかまわないのでしょう。

 

場末の酒場でビールを酌み交わしながら、昔の話などをしました。

 

彼は自分の事業が順調にいっていることを自慢気に話しました。

 

「次は3店舗目を出店する予定なんだ。開業したいドクターが順番待ちでね、門前に出店したい薬剤師も10人以上いるんだ。でも、昔のよしみでお前なら――」

 

話はリクルートでなく、フランチャイズの勧誘だったのです。
ロイヤリティーや在庫の管理について、これみよがしな条件を提示してきますが、彼の話がどこまで本当かはわかりません。しかし、金のない私には無縁の話でした。

 

酒がすすむほど饒舌になる彼の演説に、私は少しずつ嫌気がさしてきました。

 

話題を変えるため、昨日、職場の同僚が行った仕事について話してみました。

 

それは、同僚の女性薬剤師がジルテックの用量について、門前の総合病院の医師に疑義照会し、減量になった事例でした。

 

その女性薬剤師は、患者さんがみせてくれた血液検査の結果から、クレアチニンの高値に気づきました。ジルテックを腎障害患者に投与すると、血中濃度半減期の延長が認められ、血中濃度が増大するため問題があります(添付文書にもクレアチニンクリアランスと推奨用量の記載があります)。
Cockroft-Gaultの推定式からクレアチニンクリアランス(Ccr)を計算し、医師に減量を提案。結果、最初の処方の半分に減量されました。

 

私はその仕事を、とても素晴らしいと思いました。その女性薬剤師は、こういった仕事をさりげなくできる優秀な人でした。

 

毎日200枚近く処方せん調剤をこなさなければならない現場で、素早く問題点を拾い上げ対応することは、口で言うほど簡単ではありません。

 

「これからの薬剤師は、こういったことにもっと積極的に取り組むべきだ」というようなことを、その経営者に伝えました。

 

すると、その経営者は少し黙った後、言いました。

 

「――そんなことをして、何の意味があるんだ。時間の無駄だよ」

 

私は愕然としました。

 

「医師に嫌われでもしたらどうするんだ。まず経営を安定させることが第一だ。仕事には優先順位があるんだよ。そんな細かい事にかまっていられるか」

 

私はもう彼と話す気になりませんでした。

 

少し口論になったこともあり、場が白けたので、その日は御開きとなりました。しかし、もう彼と会うことはないだろうと思いました。

 

会計の時、彼は奢ってくれると言いましたが、それを丁寧に断り、店を後にしました。

 

極彩色で鮮やかなネオン街を歩きながら、私は先ほどのことを考えていました。

 

経営者としての事情があることはわかります。会社を存続させなければならないという重圧は、サラリーマンの私などには想像もつかないでしょう。

 

しかしそれでも、彼の考え方に納得はできませんでした。

 

彼に薬剤師としてのプライドがあるようには思えませんでした。

 

いかに処方せんを集め、売上を上げるか――その経営者の頭はそれだけです。

 

彼の会社のホームページには、「患者様の健康を応援したい」「あなたの健康アドバイザーです」など、ヒューマニスティックな言葉が並んでいます。

 

しかし、その言葉に心はありません。企業イメージを向上させるためのプロパガンダにすぎないのです。

 

私は彼の姿に、1970年代の医薬分業黎明期から調剤市場に参入した多くの経営者の姿を、見たように思いました。

 

医療人としての信念をもった経営者の元で働こう

信念のある社長

 

上記の例は極端なケースかもしれません。

 

しかし、中小企業の方針が、経営者の考え方しだい決まってしまう以上、良い経営者を見抜くことは非常に重要です。

 

それでは、「よい調剤薬局経営者の条件」とは何でしょうか。

 

まず1つ目は、「時代の流れを把握している」ということです。

 

1970年代の医薬分業黎明期から20年くらいは、病院の門前に調剤薬局を開設しひたすら処方せん調剤の数を増やせば、莫大な利益を上げることができました。現在とは比較にならないほど薬価差で利益を得ることができましたし、院外処方せんが右肩上がりに増加していた時代だったのです。

 

しかし、高騰する医療費の中での、大手調剤チェーンの拝金主義など、調剤薬局に対する批判が高まってきました。
特に医師会からの批判は強く「薬を袋に詰めているだけの仕事に、なぜフィーを与えなければならないのか」「あんな仕事なら、登録販売者に調剤権を与えれば安上がりだ」という極端な意見も上がっています。

 

調剤薬局は、既存の経営スタイルからの脱却を迫られているのです。

 

国の方針である、地域医療の充実に対応して、薬剤師も医療人としてより深く医療に関わっていかなければなりません。調剤一辺倒のスタイルから脱却し、新しいニーズを掘り起こさなければならないのです。

 

よい経営者とは、そのことをよくわかっていて、在宅医療など様々な分野に進出しようとしています。

 

2つ目は、「薬剤師の職能を高めようとしている」ことです。

 

処方せん通りに調剤していればよかった時代と違い、現在は薬剤師の職能そのものが問われています。

 

袋に詰めているだけなら、国家資格はいりません。今までと同じような仕事をしていては「薬剤師は必要ない」とされても仕方ありません。

 

薬剤師が関わることができるニーズを掘り起こし、医療人として医療に貢献するには、薬剤師の能力の向上が不可欠なのです。

 

上記の女性薬剤師のケースなら、たとえ医師との関係がこじれても、その薬剤師の仕事を高く評価すべきです。

 

第一、それができない経営者の元では、いくら給料が高くても働きたくはありません。成長しようというモチベーションが保てるわけがないのです。人はパンのみに生きるわけではありません。

 

3つ目は、「患者さん第一」を徹底していることです。

 

経営コンサルタントの小宮一慶さんは著書「一流になる力 ビジネスで勝ち残るための教科書 (講談社BIZ)」で、企業の成功のすべては「お客さま第一」を徹底することから生まれている、と言っています。

 

なぜ「お客さま第一」で上手くいくようになるのでしょうか。

 

お客さまを第一にすれば、当然お客さまは喜びます。するとお客さまが集まってきます。そうすると仕事が増え、事業がうまくいき、会社が儲かるのです。

 

また、働く人にも働きがいが出てきます。自分のやったことでお客さまが喜んでくれるので、働いている人は嬉しいです。また利益が出てくれば給料も上がっていきます。そうするとやる気が出て一生懸命働くので、ますます事業がうまくいくようになるのです。

 

言われてみれば、とても単純な理屈です。

 

しかし、こんな簡単な理屈を、多くの経営者はわかってないそうです。
上記の経営者しかり、「お客さま第一」を会社の宣伝のための「手段」として使うだけで、「目的」とできてないのです。

 

お客さまは払ったお金と比べて得られたバリューを見ています。そして「得をした」と思わなければ、継続的に利用することはありません。

 

上記の女性薬剤師のケースで言えば、彼女は患者が払った負担金以上のバリューを、患者に提供しています。また、リスクを事前に回避しています。

 

当然、彼女は高く評価されるべきなのです。

 

もちろん、医療に商取引モデルを完全に当てはめることはできません。
しかし、「患者さん第一」の心は、医療従事者に求められるものです。

 

患者さんが一番で、自分たちは二番。

 

その考えを心から実践している経営者が、これからの時代を生き残るのではないでしょうか。

 

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