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ここ数十年の間に、ドラッグストア内に調剤薬局が目立つようになってきました。
とくに2009年の改正薬事法施行によるOTC薬販売の規制緩和を機に、
他業態との差別化をはかるため調剤機能の強化が活発化しています。
私は以前、調剤室が併設されたドラッグストアで働いていました。
まわりに医療機関はなく、1日に処方せんを3枚受けるかどうかという状態でしたが、会社はどんどん調剤併設型のドラッグストアをつくっていました。
ドラッグストア内に調剤室を作れば、当然薬剤師の確保が必要になりますし、ある程度の在庫も揃えなければなりません。
しかし、薬剤師の慢性的な不足から、どこの企業も薬剤師採用に苦心しています。
薬剤師がいなければ、せっかく設置した調剤薬局も機能できません。
それでも調剤併設型のドラッグストアは増加しつづけているのです。
ドラッグストア各社が調剤機能強化に奔走する理由はなぜでしょうか
医薬分業は明治時代に制定された「薬律」「医制」で定められました。
しかし、医師の調剤を認める例外規定が長く存在し、日本では事実上の非分業が続きました。
しかし、1974年(昭和49年)、診療報酬の改定によって処方せん料が100円から500円に引き上げられました。
この年が「医薬分業元年」といわれるように、医薬分業がスタートしたといえます。
それから約40年で、調剤薬局の形もずいぶんかわりました。
分業当初は病院前の門前薬局や、診療所とペアになったマンツーマン薬局で処方せんを応需する形態が主流でしたが、
次第に面に広がっています。
面で処方せんを受けるとは、近隣の多様な医療機関から処方せんを応需することです。
ドラッグストアの中にも、調剤室を整備して医薬分業に取り組む企業が増えています。
米国の調剤市場は約29兆円の規模ですが、日本はまだ6兆円です。
人口が米国の半分弱である日本を考えた場合、
調剤市場はこれからも成長が予測されます。
ドラッグストアは低価格と品揃えの豊富さを武器に成長してきた業態です。
しかし「物を買うところ」としては認知されていますが、
「医療を提供する場所」としてはまだまだ認知されていません。
米国のドラッグストアには調剤室があるのがあたりまえです。ドラッグストア先進国の米国では、
ドラッグストアを選択する理由の1位が「ヘルスケアの専門性」2位が「便利性」です。つまり米国のドラッグストア
は「医療の専門家」として認知されているのです。
2009年の改正薬事法を受けて、他業態がOTC薬販売に参入する中、ドラッグストアは調剤機能を高めることで
他社との差別化を計っています
。
調剤は医療の専門家としてドラッグストアが認知されるために、
必須の機能なのです。
少子高齢化、国民医療費の急増を受けて、医療は病院から地域に移ってきています。
入院の長期化をなるべく避け、退院患者は病院から自宅や施設に戻されて、そこへ医師、薬剤師、看護師、理学療法士、ヘルパーがチームを組んで地域医療を完結する時代に移りつつあります。
この地域医療連携のコア施設として位置づけられるのが「かかりつけ薬局」です。
かかりつけ薬局とは、処方せん調剤や健康相談を受ける薬局を一つに決めておくことです。
OTC医薬品は、他業態の参入によりドラッグストアに売上が奪われ、価格競争の結果、利益が落ちています。
ドラッグストアがかかりつけ薬局機能を持つことにより、ドラッグストアへの信頼が高まり、顧客の支持が
高まります。
かかりつけ薬局としての役割を追求すれば、調剤機能やOTC薬・ヘルスケア商材販売だけではその役割を果たせなくなります。
医療を受ける高齢者の中には、店まで来ることができない人もたくさんいるからです。
そこで必要となるのが在宅医療です。
高齢化時代は、店舗に来られない患者や寝たきり患者に対して、
薬剤師が調剤・配達・服薬指導などを行う在宅医療が中心となります。長期療養患者は費用の高い病院から、在宅あるいは施設での療養へと切り替えられていくからです。
近年、在宅医療は高齢患者を中心に需要が増えており、調剤併設型ドラッグストアの新たなビジネスチャンスとなっています。
例えば、スギホールディングスでは、点滴を中心とする患者への対応として、点滴液の調剤を行うクリーンルームを100拠点にする計画を立てています。
※「クリーンルーム」
無菌調剤室のこと。高カロリー輸液の調整や抗がん剤の調剤を行う。抗がん剤は細胞傷害性の薬剤であり、
医療従事者にも細心の注意が必要なことから、クリーンルーム内で行う。
国が進めている医療制度改革は、病院に集中していた医療機能を他のヘルスケア機関に分散することによって、効率化を図ろうという意図があります。医療機能を分散した場合、他職種の医療関係者が一人の患者に対してケアを行うことになります。
チーム医療の中でドラッグストアが役割を果たすには、調剤機能を高めることが必須であるといえます。
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