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調剤薬局は、名前の通り「処方せんを調剤する薬局」として認知されています。
国の政策によって1990年代初頭から院外処方せんが急増し始め、それと比例するように調剤をメインとする薬局チェーンも急増し、爆発的に売上げを伸ばしてきました。
つまり、調剤薬局というビジネスモデルは、「医薬分業」という国の追い風のおかげで成長してきたようなものなのです。
しかし、現在ではその成長に陰りが見え始めています。
「薬剤師は将来過剰になるか? 【2018年版】」でも紹介しているように、2010年以降、院外処方せん枚数は頭打ちになっています。
さらに、2年に一度の診療報酬改定のたびに、調剤報酬はじわじわと減らされています。
今後「調剤だけをひたすらこなす」というビジネスモデルでは、調剤薬局の経営はかなり苦しいものになるでしょう。
上記のような経営環境の中、在宅医療が注目されています。
2000年以降、要介護・要支援認定を受けた介護保険受給者数は年々増加しています。
2003年で370万人だった受給者数は、2015年には600万人に達しました。
さらに、2016年の調剤報酬改訂では
など、在宅を行う薬局をさらに評価する方向にシフトしています。
在宅は薬局(薬剤師)に残された数少ない成長分野なのです。
今後の調剤薬局経営は、在宅医療に参入することなしでは成立しないでしょう。
多くの薬剤師が在宅医療に興味を示す中で、下記のようなネガティブな意見もあります。
薬剤師の在宅業務って、結局薬を宅配するだけじゃないですか?
何か意味があるのでしょうか?
バイタルサインを取るって言ったって、ただ血圧測る程度でしょ?
それが意味のあるものとは思えません。
在宅業務は薬剤師の仕事なのでしょうか?
薬剤師BBS(https://r-yakuzaishi.net/bbs/free/531.html)から引用
無料なら親切な薬局だと思われるでしょうがね。
どうせなら医師と看護師が訪問の時にに渡すのがベストでしょう。
いろんな対応もすぐにできますし。
薬剤師の在宅なんて意味がないですね。
何もできないし、患者さんによっては余計な訪問なんか迷惑でしょうね。
余計にお金を取られてね。
だから在宅に付く薬剤師の報酬は無駄ですから大きく削減されるべきだと思いますね。
薬剤師BBS(https://r-yakuzaishi.net/bbs/free/531.html)から引用
このような考えを持つ薬剤師は、残念ながらたくさんいます。
薬剤師という仕事に希望が持てないのでしょう。医師や看護師に対して劣等感があり、薬剤師業務に対して斜に構えています。
こんなメンタリティで仕事してもやりがいないと思いますよ。ただ給料貰うために自分の時間を売っているだけです。時間切り売り薬剤師。
では、在宅医療に薬剤師が参加することで何が変わるのでしょうか。
それは、薬物治療のクオリティです。
薬剤師が在宅に関与することで、薬物治療の効果を高めるとともに、薬による有害事象の発生を防ぐことができるのです。
在宅医療は、医師と看護師が中心となって行ってきました。
医療全般に言えることですが、医療を行う中心は医師であり看護師なんですよね。
ただ、医師や看護師はそれほど薬に詳しいわけではありません。
やはりゼネラリストである薬剤師とは、知識量にかなりの差があります。
医師は専門分野で用いる薬はかなり詳しいですが、専門外だとほとんど知らないというケースは珍しくありません。
医師や看護師は「薬効」に詳しい方は多いのですが、「製剤学的知識」「薬物動態」となるとほとんど知らないのではないでしょうか。
薬剤師は在宅医療のメインとはなりえません。
しかし、薬剤師の知識が医療チームにプラスアルファされることで、医療の質が向上します。
医師は患者を診断し、医療の全体的な方向性を示します。
薬物治療なら、症状から第一選択薬を検討して、状態の変化に応じて用量を調節したり、別の作用機序の薬に切り替えたりします。
ただ、同じ疾患の患者でも、年齢、体質、既往歴、服薬コンプライアンスなどの違いがあります。
服薬コンプライアンスに問題があるなら薬剤数や剤形の変更を検討すべきですし、嚥下障害のため胃ろうにするなら、それに適した製剤を選択しなればなりません。
肝機能・腎機能の状態によって使える薬・使えない薬があります。
薬剤師には、医師が決めた薬物治療を最適化する役割があるのです。
スーツをオーダーメイドするように、患者個人の状態に合うよう調整するわけです。
30歳の成人男性と、80歳で10種類もの薬を服用している高齢者では、どちらの薬物選択に細やかな注意が必要でしょうか。
当然80歳の方です。脂肪量の増加、生理機能の低下により、通常量の薬でも有害事象が起こる可能性が高いです。薬物間相互作用もあります。
在宅医療は高齢者が中心となるため、その薬物治療には細かい薬学的知識が求められます。
つまり、薬剤師が貢献できる可能性の高い領域と言えるのです。
それでは、在宅医療における薬剤師の具体的なニーズには何があるのでしょうか。
在宅医療の質を高めるための、薬剤師ならではの仕事とは?
服薬コンプライアンスとは、患者が医師の指示通りに服薬することです。
在宅患者の場合、家族やヘルパー、看護師が服薬管理すればさほど問題にはなりません。
しかし、独居だったり認知症が進んでいる患者だと、服薬コンプライアンスはかなり悪いと考えられます。
ある調査によると、潜在的な飲み忘れ等の年間薬剤費の粗推計 は約500億円※とされています。
※平成19年度老人保健事業推進費等補助金「後期高齢者の服薬における問題と薬剤師の在宅患者訪問薬剤管理指導 ならびに居宅療養管理指導の効果に関する調査研究(https://www.nichiyaku.or.jp/action/wp-content/uploads/2008/06/19kourei_hukuyaku1.pdf)参考
毎年莫大な額の薬が、まったく効果を発揮しないまま破棄されているわけです。
ただ、同調査によると、在宅患者訪問薬剤管理指導等により改善される飲み忘れ等の年間薬剤費の粗推計は約400億円と算出されています。
「服薬コンプライアンスが高い高齢者はQOLも高い」言われることから、薬剤師の関与によって薬物治療の質を相当改善できる可能性があります。
服薬コンプライアンスを向上させるのに代表的な方法は一包化です。
服薬時点(朝・昼・夕・寝る前)ごとに薬を一つの袋にまとめることで服用しやすくなることはもちろんのこと、家族の管理負担も減らすことができます。
薬を一包化し、お薬カレンダー等で管理すれば残薬確認をしやすいです。
また、オブラートで苦みのある薬の味をマスクしたり、嚥下が悪ければとろみを加えたり、剤形を変更することも有効です。
嚥下障害のために経鼻胃管や胃ろうからの投薬が必要である場合は、さらに製剤学的知識が求められます。
薬によって粉砕が不可であったり、溶解しずらいものもあるからです。
薬には、日光や湿度、気温の影響を強く受けるものもあります。
正しく保管しないと薬効が失活し、十分な効果が期待できません。
薬は正しく使わないと効果が発揮されなかったり、副作用が発生するものもあります。
ビスホスホネート製剤は空腹時に服用しないと胃腸障害が起こりやすくなります。
喘息吸入薬のβ2刺激薬は吸入回数を守らないと心臓に負担がかかりますし、ステロイド薬なら口腔内カンジダを防ぐためうがいをしなけばなりません。
糖尿病が悪化して入院してきたら、インスリン製剤を自己調整して使用していたというケースは珍しくありません。
服用タイミング(食前・食後など)に影響を受けたり、使用法に注意が必要だったり、服用・使用後に特殊なケアが必要な薬剤の場合、「正しく使えているか」定期的にチェックする必要があります。
薬効 | 商品名(一般名) | 注意事項 |
---|---|---|
食後過血糖改善剤 |
|
食直前に服用(食物と混ざらないと効果が発揮されないため) |
高コレステロール血症治療薬 |
|
他剤と併用した場合、併用薬の吸収を阻害する可能性高い。時間を開けること |
ビスホスホネート製剤 |
|
胃腸障害の副作用を避けるため、起床時に十分量の水(約180mL)の水とともに服用し、服用後30分間は横にならない |
緑内障治療薬(プロスタグランジン製剤) |
|
頻回投与によって眼圧下降作用が減弱する可能性があるため、1日1回を超えて点眼しないこと。また、角膜障害を避けるため、1回1滴以上は点眼しない。 |
過敏性腸症候群治療剤 | コロネル/ポリフル(ポリカルボフィルカルシウム) | 十分量(コップ1杯程度)の水で服用すること。喉につかえて膨張し、喉や食道を閉塞することがある。 |
抗精神病薬 | ロナセン(ブロナンセリン) | 食事の影響を受けやすいため、有効性・安全性が確認されている「食後」に服用すること。※食前・空腹時に服用すると、食後よりも吸収が低下し、作用が落ちる可能性が高い。 |
「薬が効いているか」「副作用はないか」という確認は、医師だけのものではありません。
医師で薬局経営者である狭間研至氏は、著書「薬剤師のためのバイタルサイン」で、
「薬剤師は「効能・効果」とともに「副作用」がセットで出てくる唯一の医療職種である」と述べています。
医師は常に「効く薬」を探していますが、副作用に意識が回らない人は多いです。
私も以前医師に「多少の副作用はいいから、効く薬を提案してくれ」と言われたことがあります。
しかし、前述したように、高齢者医療は常に副作用のリスクと隣合わせです。
認知症による興奮状態を抑える目的に抑肝散はよく処方されますが、こういった漢方薬に含まれる甘草による偽アルドステロン症は有名な副作用です。
便秘に用いられるマグネシウム製剤は比較的安全性が高いとされていますが、高マグネシウム血症もによる死亡例が報告されています。
副作用の意識を常に持つ薬剤師は、リスクマネジメントに大きく貢献できるのです。
バイタルサイン(vital signs)は、vital(生きている)signs(兆候)という意味であり、人間が生きている根拠となる項目のことです。
バイタルサインには、脈拍、呼吸音、体温、血圧、SpO2(経皮的動脈血酸素飽和濃度)、心音、心拍数、呼吸音、グル音(腸管の蠕動音)などがあります。
バイタルサインは医師・看護師にとっては日常的なものですが、多くの薬剤師にとっては馴染みがないものです。
しかし、今後の在宅医療において、薬剤師のバイタルサインチェックは重要な行為となっていくでしょう。
前述の狭間氏は著書「薬剤師のためのバイタルサイン」で、「薬剤師が(バイタルサイン)に取り組む意義は「医薬品の適正使用」と「医療安全の確保」の2点である」と述べています。
つまり、バイタルサインを経時的にチェックすることで、自分が調剤した薬の効果・副作用を確認できるわけです。
今後、在宅に関わる薬剤師は、医師の処方設計にまで関与することが期待されています。
前述したように、薬剤師は薬物治療を患者個人に最適になるようオーダーメイドする役割があります。
医師の細かな剤型希望に合う薬を提案するわけです。
また、腎機能・肝機能の状態によって、使えない薬もあります。
特に腎排泄型の薬は、腎機能の低下にもろに影響を受け、薬効が強く発現する可能性があります。
「ポリファーマシーとは?薬剤師に求められる役割は?」でも説明していますが、ポリファーマシーは在宅医療についてまわる問題です。
薬による有害事象は、生理機能が低下し、他剤併用が多い高齢者ほど発生しやすくなります。
薬剤師は、薬物間相互作用・薬物動態等の知識を活かして、患者のリスクを最大限に減らすことを期待されています。
在宅医療における薬剤師の役割はまだ歴史が浅いため、「なかなか現場に受け入れられない」という現実があります。
薬剤師個人の能力と医療従事者・患者(家族)の理解が必要となります。
上手くいかないと冒頭のBBSの投稿のように「薬剤師なんていらないじゃん」という気持ちになるのも分からないでもありません。
ただ、在宅医療は薬剤師が外に出るチャンスではないでしょうか。
仕事を与えられるのを待つのではなく、仕事を生み出すという意識が求められます。
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