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地方で目指すオンリーワン
最近、薬学生と交流する機会がありました。
現役の薬剤師と薬学生が交流し、在宅医療の将来を話し合うという研修会です。
こんなサイトを運営している私は、当然「イマドキの薬学生」に興味があります。
彼らがどんな薬剤師を目指しているのか、どんな未来を思い描いているのか、この機会にぜひ聞いてみたいと思いました。
「みんな進路は決めた?どこに就職したいのかなあ」
こんなセミナーに参加する学生は、そもそも意識が高いです。自堕落な学生時代を過ごした私とは正反対の人達ですよ。真剣に自身の将来を見つめています。
私の質問に対する大多数の意見はこうでした。
「まずは都会の大学病院か総合病院でスキルを磨きたい。やっぱり専門性を身に着けたいので…。 薬局?それはないかなー」
「やっぱりなー」そう思いましたよ。
私が大学を卒業した10年前も今も、薬学生の考えはほとんど変わっていません。
みんな「都会・大病院」を目指します。優秀な人ほどそうですよね。
しかし、私は声を大にして言いたい。
地方の薬剤師のほうが輝けるよ!
私は20代を都会のドラッグストア、調剤薬局で過ごし、30過ぎて地方の精神科病院の就職しました。
周りには山と川しかありません。たまに病院の敷地内に鹿がウロウロしてますw
当然薬剤師は不足しています。しかし、そんな地域だって高度な専門性を発揮し活躍している薬剤師がたくさんいるのです。
なぜ地方のほうが薬剤師として活躍できるのか?やりがいを感じやすいのか。
実体験を踏まえつつ解説します。
東京、大阪、名古屋などの都市と比べて、地方は薬剤師が不足しています。
とくに岐阜の山間部、長野、山陰地方(島根、鳥取)などは薬科大学が少なく(むしろ無い)、もう絶望的に不足しているようです。
しかし、「数が少ない」ものはそれだけで価値があります。金、ダイヤモンド、イケメン、美女etc絶対数が少ないから価値があるわけです。
薬剤師が不足している地域の薬剤師は、仕事内容にしろ給与・待遇にしろかなり有利になるのです。
薬剤師が少ないということは、若くして重要なポジションを任される可能性が高いです。
私の先輩は30歳で中小病院の薬局長を任されています。
また、感染制御専門薬剤師を取得し、感染対策委員会で院長や医師と対等にディスカッションしています。
長野に移住した友人は、在宅をメインとした調剤薬局で薬局長として活躍しています。
薬局のマネジメント、医師の在宅訪問への同行、処方提案、ケアマネジャーとの会議など、日々忙しく駆け回っています。
「薬剤師がいないから自分ですべてやらざる負えない!」という悩みはありますが、重要な仕事を任されることでスキルは格段に向上します。
田舎の中小病院というのは、とにかく人材確保に頭を悩ませています。
常に医師、看護師が足りないので、個人にかかる負担は非常に大きい。毎日猫の手も借りたい忙しさなのです。
私の勤める精神科病院もまさにそんな感じ。医師は専門外の薬物治療について、薬剤師からの意見を聞きたいと思っています。
私の先輩は幅広い疾患のガイドラインに目を通し、薬物選択について医師に的確なアドバイスをします。彼の意見を聞くために医師が薬局を訪れるほどです。
働く上でお給料は大事ですよね!。
地方の薬剤師の給料は、都市部よりかなり優遇されます。
薬剤師の年収は、経験、専門資格などよりも、結局需要と供給バランスできまります。
地方は高い年収を提示しないと薬剤師は確保できません。そのため、年収600万、800万という求人が普通にあります。なんと1000万の大台に乗る求人も。
驚くのは給料だけではありません。「うちに来てくれるなら家賃負担、テレビ、冷蔵庫もつけますよ。何なら自家用車も手配しちゃうよ!」なんて会社も…
関連記事:普通の薬剤師が年収1000万円級の高年収を得る方法とは?
一方、東京、大阪といった都会は、どんどん薬剤師が増えています。
若いほど華やかなシティーライフに憧れるもの。東京で暮らすことで自分の価値が上がるような妄想を抱いていますよね。私も若いころはそうでした…
しかし、薬剤師が多ければそれだけ一人の存在価値は下がります。相当高い専門性、特殊能力を持ってないと「その他大勢」になってしまいますよ。
地元でちょっと可愛い女の子が女優を目指して上京したら箸にも棒にも掛かからなかった。よくある話です。
年収面でもたいした期待はもてません。経営者としても、代わりがいくらでもいる人に高い給料を払う必要は無いからです。
友人で東京の総合病院に就職した者がいます。最先端医療、30人を超える薬剤師を擁する大病院です。意気揚々と卒業してきましたよ。
しかし、数年後会ってみたら、驚くほど疲れていました。
「調剤業務、病棟業務の負担が思った以上に重いんだよね。しかも給料も上がらない。専門資格を取っても上がつかえているからなかなか良いポジションにつけない…」
「もう地元に帰って調剤薬局に転職しようかなあ…」そう嘆いていました。
薬剤師が多ければそれだけ厳しい競争にさらされます。その中で出世していくには相当な努力が必要です。
地方ならオンリーワンになれたかもしれないのに、都会に出たばっかりに埋もれてしまう。わざわざ厳しい競争にさらされる環境を選ぶ必要はないわけです。
薬学生というのは、なぜか「地方・小規模の病院、薬局はスキルアップができない」とイメージしています。
しかし、それは間違っています。実際、私は地方弱小病院で輝く薬剤師をたくさんみてます。
私の尊敬する薬剤師は、精神科専門薬剤師として活躍しています。
統合失調症治療薬の処方をクロルプロマジン換算で分析したり、ベンゾジアゼピン系薬を受容体プロファイル別に分類して、医師に処方提案します。
さらにそのデータをもとに学会で発表しています。
地方の名もない中小病院にだって、素晴らしい仕事をする薬剤師がいるのです。
「地方は薬剤師がいない→超激務」そうイメージするのは当然です。
たしかに人材が不足している会社はどうしてもハードワークになります。
しかし、何も地方だけが大変なわけではありません。
都会の病院・薬局でも、経費節減のため薬剤師をギリギリに抑えている会社はたくさんあります。もうこれは経営者の考え方次第です。
むしろ、地方の人々はゆったりしているので、あまり時間を厳しくに問われません。
「早く薬をくれ!説明いいから!」なんて叫ぶ患者は都会に多いのでは?
クレームも起こりにくく仕事はやりやすいものですよ。
「鶏口(けいこう)となるも牛後(ぎゅうご)となるなかれ」
ということわざがあります。
「大きな集団の中で下っ端として使われるより、小さな集団のトップに立ったほうが良い」という意味です。
この考え方は、増え続ける薬剤師業界において、将来もっと大きな意味を持つだろうと思います。
進路に迷っていたり、都会の生活に疲れている薬剤師さんは、今一度自身のキャリアを考えなおしてみてはどうでしょうか?
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