「薬剤師は薬を飲まない」を読んだ知人が仕事を辞めそうです

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「薬剤師は薬を飲まない」を読んだ知人が仕事を辞めそうです

退職届

 

最近ちまたでは「医療不要論」「薬不要論」に関する書籍が話題ですね。

 

現代医療のあり方に異を唱え、医師や薬に頼りすぎの日本人に警告を発するものです。

 

今回は、この話題に関するメールをいただきました。

 

”薬剤師は薬を飲まない” を信じきって
有ろうことか知り合いが仕事をやめると言い出しました。

 

私は、素人ですが、薬全般に不信感を抱かせて一般の人の誤解を広げてでも商売したいような本にしか見えません。

 

ただ、私は素人ですので、バクタさんの意見も簡単にでもお聞きできればありがたいです。

 

その知り合いは、もう完全にこの本の著者の宇田川さんの信者になってしまっているようで、驚きました。

 

私は思っている意見をいうと、怒らせてしまうばかりのようなので、もう諦めていますが、

 

ほかの専門家の方も意見も聴けるとありがたいです。

 

立派なサイトを運営されていらっしゃって、敬服しました。

 

投稿者

 

 

貴重なご意見ありがとうございました。

 

本を信じて仕事を辞めようとしているとは、なかなか深刻な状態ですね。大丈夫か!?

 

「薬剤師は薬を飲まない」とは?

 

読んだことのない方のために本書の簡単な紹介を。

 

薬剤師は薬を飲まない (廣済堂新書)」宇多川久美子 著

 

本書は、「薬を使わない薬剤師」を肩書にもつ宇多川久美子氏が、薬に頼りすぎの医師・患者に警告を発し、自然治癒力を高めて「薬依存」から脱却する方法を解説した本です。

 

著者プロフィール

※「薬剤師は薬を飲まない」のプロフィールから抜粋

 

宇多川 久美子

 

一般社団法人国際感食協会理事長、(有)ユアケー代表取締役、薬剤師・栄養学博士(米AHCN大学)、ハッピー☆ウォーク主宰、NPO法人統合医学健康増進会常務理事。

 

宇多川氏は薬剤師として医療に携わる中で、患者が薬漬けの治療で不利益を被っていることに疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指したそうです。

 

現在は栄養学、運動生理学などの豊富な知識と経験を活かして、薬に頼らない健康法を多くの人々に伝えているとのことです。

 

「薬剤師は薬を飲まない」を読んでみた

 

私は近藤誠本をはじめとした「医療不要論」関連の本があることは知っていました。

 

本書もタイトルは知っていましたが、恥ずかしながらこういった本は読んだことがありませんでした。

 

ですので、これを機会にアマゾンで取り寄せて読んでみましたよ。

 

内容の簡単な紹介

 

先にも説明したとおり、「薬剤師は薬を飲まない」は医師依存、薬依存の日本人に警告を発している本です。

 

1章の「なぜ薬は効くのか」では、薬が効くことの怖さを副作用の事例を紹介しながら説明しています。また、薬はそもそも合成品であり、合成品は体に毒であること、自然食思考の人達が合成品の薬を平気で飲んでいることへの警告も書かれています。

 

2章では「実は薬を飲むことが免疫を下げる原因である」ことや、最近のトピックである子宮頸がん予防ワクチンの話、うつ病治療薬の怖い副作用を紹介し、さらに3章、4章では薬の副作用の具体的な事例を挙げつつ「自然治癒力を高めることが最高の治療である」ことを訴えています。

 

最後の5章では、薬依存から抜け出すための健康な体を作るトレーニング方法が、分かりやすい図とともに解説されています。

 

志すごいね

 

本書によると、宇多川氏は幼い時にご兄弟を亡くされたり、お姉さんが重い心臓病を患うなど病気が身近にある環境であったようです。

 

そんな家庭環境が「一人でも多くの人の健康を守りたい」という思いを根強くしたとのこと。

 

本書には随所に「人の健康を守りたい」「それが私の使命である」という言葉が出てきます。「薬が健康に害を及ぼしているなら私は白衣を脱ぐ」という決意の強さと行動力を感じます。

 

医療に対する志の高さ熱い気持ちが本を読む私にもビンビン伝わってきました。

 

読む人によっては「医学界にケンカを売っている」と思われる内容です。名前と顔を晒して権威に真っ向勝負を挑むなんてなかなかできないですよ。凄いですね。

 

適当に薬学部に入り、他にできることもないから薬剤師になった私は恥ずかしくなりました……

 

当たり前のことが書かれている

 

医学は日進月歩で進んでおり、新しい薬が次々と登場します。もしも薬で病気が治せるのであれば、患者さんの数はどんどん減り、医療費も少なくなっていくはずです。

 

しかし、実状はどうでしょう?

 

生活習慣病の患者数は増え、医療費はどんどんかさんでいます。

 

つまり、どんなに医学が進み、どんなに効能が優れた薬が出てきても、所詮、薬は病状を抑えることしかできないということです。

 

 

「薬剤師は薬を飲まない」を通読してみて感じたのは「当たり前のことが書かれている」ということでした。

 

4章までは「薬が効くメカニズム」「副作用の怖さ」が事例を紹介しながら説明されていますが、医師、薬剤師といった専門家にとっては一般的な内容です。

 

しかし、一般の方が読むと「薬ってこんなに怖いんだ……」と若干ひいてしまうような内容かもしれません。

 

薬には副作用があるから気をつけて

 

本書ではタミフルによるギランバレー症候群、降圧剤による体の不調など「怖い副作用」が紹介されています。

 

薬は苦しみや痛みを緩和してくれる便利なものであり、薬に助けられたことのある人にとっては頼れる存在です。しかし、多かれ少なかれ副作用を経験したことのある患者さんもいます。重症化する副作用は千人に一人、一万人に一人という低い確率ですが、それでも一度辛い経験をした患者さんにとっては、薬は憎むべき敵でしょう。

 

サリドマイドによる副作用、薬害エイズなど、過去には重大な薬害の歴史があります。最近だと子宮頚がん予防ワクチンによる筋肉障害などが取り上げられています。被害に遭われた方の悲しみを私達が理解することはできないでしょう。

 

1に運動、2に食事、最後に薬

 

薬で病気は治せません。

 

薬で健康は作れません。

 

薬の限界を感じた私は、薬局の窓口に立ちながら、常連となっている生活習慣病の患者さんをなんとかして薬漬けの生活から救出しなければならないという使命感を持つようになりました。

 

本書で何度も繰り返されている主張です。

 

たしかに、ほとんどの薬は病気を治すものではありません。痛みを緩和したり、数値を改善させたりするだけで根本的な治療にはなりません。ただ、血液系のがんなどある種の病気には完治させる薬があります。

 

「まずは運動と食事と休養が大事。それとストレスをためないこと」これって当たり前のことですよね。ほとんどの薬はあくまで回復を助けるためのもので、生活習慣の改善が一番大事であることは言うまでもないです。

 

しかし、「薬を飲めばそれでいい」と思っている患者さんが多いのも事実。糖尿病の薬を飲んでいるのに、食事に気を使わず家でごろごろしていてはそれは治らんよ、という話です。

 

薬を飲むと回復が遅れる?

 

本書では「薬を飲むと体温が下がり免疫力が下がる」と書かれています。

 

薬を分解するために消化酵素を無駄遣いしてしまい、その影響で代謝酵素が減る。代謝が悪くなれば体温が下がって免疫力が落ちる、と説明されていました。

 

私は初めてこの理論を聞いたのですが、体温が低いと病気になりやすいって本当なのでしょうか?

 

私の体温は35度代ですが、年に一度かぜをひくかひかないかというぐらい健康です。

 

さらに後半では、免疫力とがん発症の関係も説明されています。

 

「がんを発症しないでいられるのは、免疫力をつかさどるリンパ球ががん細胞を全部退治してくれるからなのです」

 

「なぜがんを発症するのか」は現代医学ではまだ解明されていないです。

 

がんは突然秩序を乱す細胞が現れて無限増殖してしまう病気なのですが、それが「先天的な遺伝子の異常なのか」「後天的なものなのか」「環境因子なのか」「ストレスによるのか」「食物との関係性はあるのか」などなど、完全には分かっていません。

 

複数の因子が複雑に絡み合って起こっているようなので、はっきりと「免疫力低下が原因」といってしまうのは違和感を覚えますね。

 

薬を飲んででも無理して働くのはダメ

 

つらい症状を緩和する目的であれば、薬を飲むことはやむおえません。でも、症状を抑えこんで体を酷使するのが目的だとしたら、薬を飲むことはおすすめしません。

 

病気になったときのもっとも効果のある薬は「休養」です。獣でも傷ついたらじっと体を休めますし。

 

ただ、風邪でもゆっくりできないのが現在のビジネスマンの状況であることも事実。主婦なら炊事、洗濯、子供の世話、サラリーマンならクライアントの重要な会議など、どうしても休めない場合もあります。

 

厳しい世の中です。

 

自然治癒力を高めるのは一番大事

 

「薬を飲み続けるのはよくない。自然治癒力を高めよ」が本書の主張です。その通りだと思います。薬を飲まないでいるなら飲まないにこしたことはないです。お金もかかりますし。

 

日本人が薬に頼りすぎているのは事実ですが、「どうしたら自然治癒力を高めることができるか」という情報はあまり知られていません。医師でも詳しく説明できる人は少ないでしょう。

 

そもそも「自然治癒力を高める」というのはとてもふわっとした話だと思いませんか?自然治癒力について確信をもって説明できる学者っているんでしょうか?非常に神秘的でブラックボックスなものだと思いますよ。

 

一方、薬は薬理作用がある程度分かっているので分かりやすい存在です。「ボグリボースはαグルコシダーゼを阻害することで糖の吸収を抑制して……」と理が通っているので、患者さんにも説明しやすい。頼ってしまうのは当然といえます。

 

人類と薬の歴史は浅いから危険?

 

薬が世の中に出回り、多くの人が薬に頼るようになったのは、人類の歴史から見ればつい最近のこと。薬が広く出回るようになるまで、人は薬の手を借りることなく、自分の力で病気と闘い、病気を治して「生」をつないできました。

 

人類の歴史をどの時点からを最近というかは分かりませんが、人類と薬の関係は結構長いと思いますよ。当サイトの薬物受容体とはでも紹介していますが、人類と薬の歴史は記録に残っているだけでも約5000年はあります。

 

約4000年前のシュメールの時代に、当時の処方を彫り付けた粘土版が発見されています。
また、中国では約4800年前に「本草経」という薬に関する書物が編集されています。

 

約5000年前ってどんだけ昔だよ……と思いますが、気の遠くなる太古から人類は薬を発見し毒と選別し、改良を繰り返してきたわけです。これを「歴史が浅い」といってしまっていいものか。

 

医薬品の開発により寿命が伸びた

 

ただ、一般人にも広く医薬品が普及し始めたのは、1900年代初めくらいからかと思います。

 

1928年にフレミングが発見したペニシリンは人類初の抗生物質であり、ここから改良に改良を重ねられてきた抗菌薬は人類に大きな貢献をしました。

 

実際、近年の爆発的な人口の増加は、抗菌薬をはじめとする医薬品の貢献は間違いなくあるでしょう。1900年に16億人だった世界人口はたった100年で60億人まで激増しています。凄まじい増加ですよね。

 

産業革命以前は、薬は高級品であり、一部の富裕層、支配階級しか入手できなかったでしょう。ただ、大衆にも古くから伝わる民間療法のようなものも存在していたはずです。何代にも渡って部族内で受け継がれる秘伝の薬みたいなものは、どこの地域でもあったのではないでしょうか。

 

薬は副作用があるから使うべきではないのか

 

本書では薬の副作用の怖さがクローズアップされています。

 

一般の方が読めば「薬は怖い。もう飲みたくない!」と思ってしまうような内容でしょう。

 

では、薬は副作用の観点から飲むべきではないのでしょうか。

 

主作用と副作用はコインの表と裏

 

「毒」ともなりうる薬だからこそ、自分は今体調が悪いからどんな副作用が出てくるかかわらない、といった覚悟を持って服用してほしいと思います。
そして、副作用は誰にでも起こりうることだからこそ、そのリスクを減らすことができるのであれば、なるべく減らす道を選んでいただきたいと思います。

 

薬と副作用は切っても切れない関係です。コインの表と裏のようなもので、どんな薬でも多かれ少なかれ必ず副作用の問題がついてまわります。

 

薬の副作用のメカニズムはだいたい3種類に分類できるといわれています。

 

  • 薬の効きすぎ
  • 薬物アレルギー
  • 薬物毒性

 

この分類法は「実践副作用学―くすりの副作用をどう考えどうとらえたらよいのか?」を参考にしているのですが、今のところこの理論が一番しっくりきます。詳しくは「理想的な薬の条件」をご覧ください。

 

どんな薬でも上記の副作用のメカニズムを必ず持っているので、絶対に副作用がない薬は残念ながらありません。

 

睡眠薬や抗アレルギー剤による日中の眠気(薬の効きすぎ)、アナフィラキシーショック(薬物アレルギー)などは1000人いれば必ず1人は経験してしまうでしょう。アナフィラキシーショックなんて食物アレルギーと同じメカニズムなので、100%防ぐほうが難しいですよね。

 

「副作用があるから薬はダメ!」と考えるなら、世の中のすべての薬を中止しなければならない。

 

これは現実的に難しいです。

 

副作用と確率

 

副作用はすべての人が経験するものではありません。多くの副作用は0.1%とかそれ以下の確率ぐらいです。

 

本書ではタミフルによるギランバレー症候群が取り上げられていますが、ギランバレー症候群はかなり稀な疾患です。年間の発病率は10万人あたり1〜2人とされています。

 

原因は細菌、ウイルスから麻しん、風疹、流行性耳下腺炎と様々で因果関係はほとんどはっきりしていません。日本では特定疾患に認定されている指定難病です。

 

ギランバレー症候群のような副作用を経験する人は、タミフルを投与された患者数からしてごく少数でしょう。2割とか3割がこのような重い副作用になるようなら、すぐに販売中止になるはずです。

 

薬害はメディアに取り上げられやすいジャンルの一つです。副作用で苦しむ人の映像はインパクトがあるので、ドキュメンタリーを観る人を恐怖に陥れます。「こんな危ない薬を飲ませやがって!」となるのは当然だと思いますよ。

 

しかし、「子供と老人の命を奪う感染症」と言われ、1年間で死者1億人とも言われたスペイン風邪に代表されるインフルエンザの脅威に対抗してきたのは、インフルエンザワクチンでありタミフルなのです。

 

もちろん、残念ながら副作用に遭われた方は、十分にケアすべきです。ただ、感染症をはじめとする病から人間を守ってきた薬の価値、薬の改良を重ねてきた医師、研究者の努力も私達は知っておく必要があるのではないでしょうか。

 

病状と副作用を天秤にかけて……

 

ここまで自然治癒力を信じようというお話をしてきましたが、私は「痛いのを我慢してまで薬は飲むな」などどいうつもりはさらさらありません。

 

本書は完全に薬を否定しているわけではありません。上記のように、どうしても薬が必要な時は飲むべきだと主張しています。

 

私も「できれば薬は飲まないほうがいい」と思っています。肝臓、腎臓には負担がかかりますしお金もかかります。副作用のリスクがわずかでもある以上、飲まないにこしたことはない。

 

ただ、病状と薬の副作用を天秤にかけて、今は薬を優先すべきなら飲むべきです。例えば、インフルエンザなら48時間以内に抗ウイルス薬(タミフル、リレンザなど)を使うべきですし、40度を超える発熱なら苦しみを緩和するため解熱剤を飲んだほうがいいです。

 

子供が熱性痙攣を起こしているのに「自然治癒」を待っているのは母親には無理だと思いますよ。ちゃんとジアゼパムをお尻から入れるべきです。

 

体力の低下した高齢者にとって細菌感染による肺炎は死に直結します。そのため、抗菌薬の投与はやはり行わなければなりません。

 

さらに、痛風や胆石のような激痛を伴う症状は鎮痛剤で緩和できます。狭心症のような激しい痛みや脳梗塞、心筋梗塞など命の危険のある病気を予防するためにも薬は使うべきです。

 

確かに、急性症状における薬の効果は素晴らしいものがあります。しかし、糖尿病、高脂血症、リウマチといった慢性疾患の治療薬もまた、病気の進行を抑える上でなくてはならないものなのです。

 

生活習慣の改善で数値が改善されるなら理想ですが、それも難しいなら医師の指導の元しっかりと薬を使うべきではないでしょうか。

 

このタイトルはちょっと……

 

本書が主張する「薬に頼らず自然治癒力を高める」は当たり前の話です。また、急性期の薬の使用は否定しておらず「薬だけに頼って漫然と飲むのはよくない」と言っています。まっとうな本だと思いますよ。

 

私が気になるのはこの本のタイトルです。

 

「薬剤師は薬を飲まない」だと「日本の薬剤師は実はみんな薬は飲まない。薬は売るけどね」と勘違いする人もいるでしょう。実際はほとんどの薬剤師は薬を飲みますよ。私も飲みます。

 

これはおそらく編集者が考えたタイトルでしょう。本を売るためのタイトルでも言えます。

 

現在の出版業界は非常に厳しく、ほとんどの本は売れません。出版数は年々増えているのに、本を読む人口は減っているわけです。

 

本屋にいけば、ビジネス書のコーナーには大量の新刊本が山積みされています。次々と市場に投入される大量の本から「これは」と読者に手にとってもらうには、まずタイトルに食いついてもらわなければならない。

 

そのために「キャッチコピーの効いたタイトル」を考えるわけです。

 

伝え方が9割」というコピーライターが書いた本があります。それによると、キャッチコピーの技術の一つとして「ギャップ法」という方法があります。

 

  • 考えるな、感じろ
  • 最高で金、最低で金
  • 大嫌い、でも大好き

 

どれも聞いたことがありませんか? 一度聞いたら記憶に残る言葉ですよね。

 

実は、これらの言葉には共通点があります。それは「正反対の言葉を使っている」こと。

 

真逆の言葉を使うことでギャップが生まれ、その落差が読む人の興味をひくわけです。

 

「薬剤師」が「薬を飲まない」と聞いたら、「薬剤師って薬の専門家なのに、実は薬飲まないんだ。なんで……?」と知りたくなりますよね。「ちょっと読んでみようかな」と思いますよ。上手いですねー。

 

ただ、多くの薬剤師は人類が生み出した薬の素晴らしさ、効果を信じていると思いますよ。だから、この本のタイトルだけをみて薬剤師を判断して欲しくないです。

 

「薬は怖い!」と思う人が増えるのは残念ですし、そのために損をすることもあるでしょう。

 

絶対に薬が必要なケースがある

 

もちろん薬は飲まないにこしたことはありません。飲まずに寿命を全うできれば理想です。

 

ただ、どうしても薬を飲んだほうがいい病気もあります。

 

例えば、白血病や悪性リンパ腫といった血液の癌は、抗がん剤で完治が期待できます。

 

抗がん剤は増がん剤?

 

がん細胞にだけ作用する抗がん剤が開発されない限り、私も抗がん剤を使うべきではないと思います。

 

抗がん剤の副作用はだいぶ抑えれられるようになってきました。しかし、嘔吐、下痢、脱毛など苦痛を感じる副作用がある以上、安全とも言えません。

 

しかし、抗がん剤によって完治が期待できるがんがあるのも事実です。

 

私の母は、悪性リンパ腫を発症しています。発見されたときはかなり進行していて「治る確率は4割かそれを少し下回る」と言われました。

 

しかし、ほんの10年前に薬価収載された抗がん剤が母の命を救ってくれました。それがリツキサンです。

 

リツキサンが開発されるまで、悪性リンパ腫は不治の病とされてきました。しかし、2001年から日本でも使用されるようになり、RCHOP療法と呼ばれるリツキサンとシクロフォスファミド等の複数の抗がん剤を組み合わせる方法で治療効果が劇的に上がりました。

 

運もあったかもしれません。脱毛、吐気、味覚が変わるという副作用にも苦しみました。でも、完治して退院した母を見た時ほど、薬の恩恵を感じたことはありません。治療してくれた専門医、リツキサンを開発した製薬会社「ロシュ」には感謝してもしきれません。

 

専門医の意見は聞くべき

 

「医療不要論」「薬不要論」のように現代医学に疑問を投げかけるような本を読むと、「もう医師が信用できない」と思う人もいるでしょう。

 

しかし、専門医の意見は聞くべきです。私の母の担当医は、がんセンターに勤める悪性リンパ腫のエキスパートでした。それこそ一年中悪性リンパ腫に関わっているような先生だったので、安心して任せることができました。

 

臨床経験豊富な専門医は、自分の人生をかけて専門分野を極めようとしています。そういう医師と一般人の意見のどちらが信用できるか、これはもう言うまでもありません。

 

一方で、医師といえども専門が違うとほとんど分からないという先生もいます。知り合いの医師は「整形外科医と小児科医は、大工と料理人くらい違う」と言っていました。

 

良い医療を受けられるかどうかは、その道のプロである医師に出会えるかどうかにかかっているといっても過言ではありません。だからこそ、セカンドオピニオンが有効であるケースもあります。

 

薬には人類の願いが込められている

 

有史以来、ある者は金のため、ある者は名誉のため、薬を発見し開発してきました。

 

事情は様々でしょうが、誰しも「今日より明日をよいものにするため」研究に打ち込んでいたのではないでしょうか。

 

病から人命を助け、苦しみを和らげるために薬を探し求めてきたのです。「薬で他人を傷つけよう」などと治療薬を開発する人はいないと思いますよ(毒殺とかは横行しましたが)。

 

かぜ薬のCMみたいですが、綺麗事ではなく「薬には人類の願いが込められている」と思います。

 

抗菌薬をはじめとする薬のおかげで、寿命が伸びているのは確かなのです。多くの人の命を救ってきたという事実はやはり大きい。

 

副作用の問題を克服できるのはまだまだ時間がかかりますが、副作用だけを取り上げて「薬が人類に与えてきた業績」を完全に否定してしまうのはどうかと思います。

 

「健康とは何か?」ほんの一部しか解っていない

 

「お医者さんじゃないんだから、病気のことなどわからない」と思われるかもしれませんが、自分のことを誰よりも知っているのは自分です。

 

健康とは何か。

 

数値が正常な状態なのか。痛みや苦しみがないのか。

 

「健康とはどうゆう状態なのか」定義することってできるんでしょうか。

 

多くの医師はデータにもとづいて健康、不健康の判断を下しますが、本当に健康である確信があるのでしょうか。

 

人間の体はほとんどブラックボックスです。私達は「健康とは何か」ほんの一部しか知らないのではないでしょうか。

 

タバコをまったく辞める気のない患者さんがいました。私がたびたび「タバコの害」について話すとその人はこう言いました。

 

「俺はタバコ吸えるなら寿命縮んでもいい」

 

タバコが生きがいの人はいます。酒がない世の中など生きる意味がないという人もいるでしょう。

 

その人達の生き方を全否定して定型に追い込むことが医療なのかな、と疑問を覚えたことがあります。

 

医療従事者は正しい知識を患者さんに教えることはできます。ただ、どうゆう生き方をするかは本人が決めるべきなのです。考えてみれば当たり前の話ですけどね。

 

自分の健康は自分で守るという意識をもつべき

 

本書の言うように、現代人は薬を頼りすぎだと思います。

 

まずは食事、運動といった生活習慣の改善が重要視されるべきです。薬はあくまで補助的なものなのです。

 

ただ、どうしても薬を使うべき状況はあるのも事実です。

 

本書のタイトルだけを見たり中身をよく読まない人が薬に恐怖を覚えてしまい医師の治療を拒否したら……その人は病気を悪化させてしまうかもしれません。

 

副作用だけをみて薬を全否定してしまうのは、かなり損だと思いますよ。医師も患者も双方が不幸な結果になりえます。

 

薬は上手く使えばとても便利なものです。きちんと正しい知識を学びたいですね。

 

薬と上手に付き合っていきたい

 

私は「薬剤師は薬を飲まない」を否定はしません。まともな事が書いてある本だと思います。

 

ただ、薬の副作用を警戒するのも大事ですが、薬との上手いつきあい方を考えるのも大事ではないでしょうか。

 

数千年の付き合いのある薬をいまさら否定して、限りなく薬がない世の中を作るなど無理な話です。科学の進歩とともに多くの薬が開発されてきたわけで、もはや人類と薬を切り離すことはできないと思います。

 

それなら、「世の中にあふれる薬を安全に使うにはどうすればいいか」議論するほうが建設的ではないでしょうか。

 

日本の医療は、医師のさじ加減で薬がかなり自由に処方できる現状があります。欧米諸国には薬の適正使用のためのガイドラインがありますが、日本にある「薬物治療の規制」は唯一保険適応くらいなものです。薬の適正使用をコントロールしなければならない薬剤師がほとんど機能していないという事実もあります。

 

こういった医療構造の問題が、患者の薬物依存などを引き起こしてきたことは否定できません。

 

「薬の適正使用のために何かできるか」私も今一度考えて実践していこうと思いました。


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