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小売業が変化する大きな要因は「法律の変化」と「消費者の変化」です。
変化に対応できた企業が勝ち残り、できなかった企業は衰退します。
ドラッグストアは小売業ですが、調剤やOTC薬を扱う医療機関でもあります。
医薬品もまた法律の強い規制を受ける商品である以上、法律の変化はドラッグストア業界に大きな変化をもたらします。
2009年に改正薬事法が施行されました。
この法改正は、ドラッグストア、薬剤師の在り方に大きな影響を及ぼし始めました。
一番大きな改正と言えます。
OTC薬をリスクの程度に応じて区分しました。
第一類医薬品 | 安全性上とくに注意を要する成分を含む医薬品 |
第二類医薬品 | まれに入院相当の健康被害が生じる可能性のある成分を含む医薬品 |
第三類医薬品 |
日常生活に支障をきたす程度ではないが、 |
リスク程度の高い第一類医薬品は、文書での情報提供を義務づけました。
医薬品の販売は従来、薬剤師または限定された範囲での薬種商にしか認められていませんでした。
しかし、法改正により薬種商を廃止し、登録販売者制度を新設しました。
登録販売者は、第二類、第三類医薬品を販売することができます。
登録販売者制度の新設は、医薬品業界に大きなインパクトを与えました。
登録販売者は市販されているOTC薬の約95%を占める第二類、第三類医薬品を販売することができます。
つまり、薬剤師がいなくても、ほぼすべてのOTC薬を販売できる時代が到来したのです。
そこに目をつけた他業態は、すぐに動き出しました。
電機屋、コンビニ、スーパーマーケットなど今まで医薬品と関わりのなかった業態が、OTC医薬品市場に参入したのです。
原因はやはり、少子高齢化です。
将来的に人口が減少していく日本では、小売市場全体の成長は望めません。
しかし、唯一成長性の高いマーケットが、高齢者市場なのです。
2055年に総人口は約9000万人を割り、食品、アパレル、家電などの市場が減少するため、それらを主力にしている小売の売上は減少すると考えられます。
しかし、年代別にみると、50歳以下が3700万人も減少するのに対し、50代以上は100万人とほとんど減少しません。
そのため50代以上が人口構成で60%以上を占めるようになります。
高齢者にとって一番の関心事は健康ですから、OTC医薬品は期待のできる市場なのです。
2009年の改正薬事法は、あくまで薬剤師や登録販売者の対面販売を前提としてものでした。
しかし、この制度で問題となったのが、OTC医薬品のインターネット販売(以下、ネット販売)です。「第1類・第2類医薬品はインターネット販売することにリスクがある」ということで禁止とされていましたが、それに反発する業者が続出したのです。
上記したように、高齢化する社会において医薬品の需要は高まることが予想されます。また、身体が不自由で外出できない高齢者が増えれば、在宅で購入できるネット販売は便利なツールです。
国民全体からも、医薬品のネット販売を求める声は上がっています。小さな子どもを持つ母親からは、「薬を買うためにドラッグストアに行く時間がない」という人も多いです。
つまり、医薬品販売に参入しようとする業者にとって、OTC医薬品のネット販売は絶対に得たい権利なのです。
ネット販売の解禁を求める業者と、対面販売を守ろうとする業界(薬剤師会など)で何度も議論が交わされました。
そして、2013年の最高裁で、ネット販売の禁止が違法である判決されました。事実上の医薬品ネット販売の解禁となったのです。
そこで、ネット販売を前提とした制度の変更が検討され、2014年6月から新制度が適用となりました。
新制度では、OTC医薬品のうち、とくに注意が必要な医薬品を「要指導医薬品」と分類しました。
要指導医薬品は、適正使用のため薬剤師の対面販売が必要であるとして、ネット販売が禁止されています。具体的にはスイッチ直後品目(処方箋医薬品から転換して原則3年以内のもの)、および劇薬です。
スイッチ直後品目は、原則3年間の安全性を確認した後、問題なければ一般用医薬品に分類されます。
●要指導医薬品
要指導医薬品 | 一般用医薬品のうち、薬剤師の対面による情報提供と服薬指導が必要なもの(スイッチ直後品目+劇薬) | |
一般用医薬品 | 第一類医薬品 | 安全性上とくに注意を要する成分を含む医薬品 |
第二類医薬品 | まれに入院相当の健康被害が生じる可能性のある成分を含む医薬品。特に注意を要するものは「指定第二類医薬品」とする。 | |
第三類医薬品 |
日常生活に支障をきたす程度ではないが、 |
上図は薬事法上の分類ではなく、ドラッグストア、薬局などで販売される医薬品として説明しています。かつての一般用医薬品(=OTC医薬品)が、現在の要指導医薬品+「一般用医薬品」と同義と考えられます。
2013年8月の厚生省の資料によると、従来の第一類医薬品(約100品目)の中で、ネット販売が禁止である要指導医薬品は28品目、一般用医薬品全体の0.2%です(なお、その後のリスク評価期間の経過等により、2014年6月現在では、ネット販売を禁止されている医薬品は20品目となっています)。
市場規模でみれば
であり、こうして見ると、従来のほぼすべての一般用医薬品のネット販売が解禁されたことがわかります。
2014年6月の改正薬事法では、処方箋医薬品のネット販売は禁止されています。
やはり、処方薬は人体に対する作用が著しく強く、重篤な副作用が生じる怖れがあるとして、薬剤師が対面で情報提供・指導する必要があるとされました。
しかし、これについてもネット販売全面解禁を求める業者から反対意見がでています。
楽天の三木谷社長は記者会見で「処方薬は医師が処方して受け渡たすこと。これが対面でなければならない合理的説明はソクラテスでも無理だろう」とまで述べています。
また、ネット販売解禁の推進者の1つであるケンコーコムは、2013年11月、国を相手として、処方薬をネットで販売する権利を求めて東京地方裁判所に提起しました。今回の薬事法改正を受けて訴えを取り下げましたが、改正法施工後、再度訴えを起こすと表明しています。
業者が処方箋医薬品のネット販売にこだわる理由は、その市場規模にあります。
1兆円に満たない一般用医薬品市場と比べて、処方箋医薬品の市場は9兆円を超えています。
莫大なマーケットである処方箋医薬品のネット販売は、喉から手がでるほど欲しい利権なのです。
これについては、医師会からの猛反対もあるでしょうし、今度長く議論されていくでしょう。
しかし、忘れてはならないのは、「医薬品は使い方を間違えれば危険である商品である」とうことです。
インターネット上では、「薬を買うのに薬剤師から説明を受けるのが面倒だ」「説明を受ける必要性が分からない」「ネットで購入できたら便利で何も問題ないじゃないか」という国民の声が多く見られますが、ほどんどの人は「薬のリスク」についてわかっていません。
安全そうな「ルル」などの商品でさえ、アセトアミノフェンによるスティーブンス・ジョンソン症候群が報告されています。発生する確率はものすごく低いとしても、発生した場合どう対応するのかという問題があります。
薬のリスクについて、わずらわしいと思われても積極的に情報提供していくことは、薬剤師の使命です。
ネット販売のほぼ全面解禁を受けて、販売方法にも厳格なルールが決められました。
購入者は、ホームページを閲覧して薬を選んだ後、メールなどで性別、年齢、既往歴、アレルギー歴、他剤の使用状況、妊娠の有無など、様々な情報を申告しなければなりません。
また、薬効が強めで副作用のリスクが高い第一類医薬品の場合は、薬剤師から用法用量、副作用、など服用上の注意点などについて、メールなどで情報提供を受け、購入希望者が薬を服用しても問題ないことが確認された上で、ようやく商品の発送に至ります。
このような面倒な手続きをするのは、やはり薬の適正使用のためです。従来行われていた薬剤師の対面販売と同等の安全性を確保するため、上記のような手続きが必要となります。
なお、第二類医薬品については、上記のような販売方法をとるよう「努めなければならない」とされ、第三類医薬品については「望ましい」とされています。つまり、厳格な情報提供義務は求められていません。
インターネットの進歩はめざましく、今後もネット販売は拡大していくでしょう。
将来的には、事務所で電話やメール対応だけで働く薬剤師が増えるかもしれません。
登録販売者制度が新設されて一時期騒がれたのは「薬剤師不用説」です。
OTC医薬品の約95%を販売できる登録販売者がいれば、ドラッグストア薬剤師の仕事は激減するだろう、
という理由です。
登録販売者は数年の実務経験があれば受験でき、試験も比較的簡単であるため、
他業態の社員も含めて多数の資格者で溢れました。
しかし、ドラッグストアは現在でも薬剤師を求めています。むしろ、従来以上に薬剤師の需要が高まったともいえます。
なぜかというと、OTC薬の販売を他業態に奪われたドラッグストアは、より高い専門性で差別化を図るしかないからです。
それが、薬剤師による調剤とカウンセリングです。
ちなみにOTC薬の販売が自由な米国では、ドラッグストアはOTC薬のシェアはわずか35%しかもっていません。
他業態が65%ももっているのです。
しかし、米国のドラッグストアで薬剤師が必要とされるのは、やはり調剤です。
ウォルグリーンの商品売上構成でいえば、調剤は65%です(2009年)。日本の調剤薬の構成比6%程度と比べると、いかに高いかがわかります。
日本の医薬分業率の成長度、門前薬局の処方せん応需枚数の割合、在宅医療の推進を考慮すると、
ドラッグストア業態が調剤市場のシェアを高めることは必須といえます。
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