専門薬剤師、認定薬剤師はキャリアアップになる?転職に役立つのか

専門薬剤師と認定薬剤師

 

薬剤師の「資格」ってホントに役立つの?

 

 

2016年の調剤報酬改訂で最も注目を集めたのは、
「かかりつけ薬剤師指導料」「かかりつけ薬剤師包括管理料」の新設でした。

 

患者が「この薬剤師に任せたい」と依頼した薬剤師が、患者の薬物治療を全面的にサポートする――これは、国が実現したい薬局薬剤師の理想姿です。

 

この算定要件の一つに「研修認定薬剤師の取得」が含まれたため、今まで研修認定薬剤師に興味のなかった薬剤師が、一斉に資格取得に乗り出しました。

 

応募が多すぎて、研修手帳の供給が間に合ってないほどだそうです。

 

「認定薬剤師という資格」が調剤報酬というわかりやすい形で評価された――これは、薬剤師・企業経営者にとって大きな衝撃でした。新しい時代の到来を感じざるおえません。

 

今回の改訂を受けて、専門薬剤師・認定薬剤師の取得を目指す薬剤師がさらに増えることは間違いないでしょう。

 

はたして、これらの資格は薬剤師のキャリアアップ、転職に役に立つのでしょうか。

 

ここでは、ドラッグストア、調剤薬局を経て、精神科の病院薬剤師として働いているサイト管理人が、自身の実体験を踏まえつつ「認定・専門薬剤師は本当にキャリアアップになるのか」について検討していきます。

 

専門薬剤師、認定薬剤師にはどんなものがある?

 

まず、専門薬剤師・認定薬剤師にはどんな資格があるのでしょうか。

 

「専門薬剤師と認定薬剤師」にジャンル別、疾患別にまとめました。

 

乱立しすぎの薬剤師関連資格

専門・認定薬剤師といった薬剤師関連資格はすごい数があります。

 

日本薬剤師研修センターや日本病院薬剤師会など、薬剤師にお馴染みの認定組織だけでなく、様々な学会が独自の制度を設けているためです。その数は軽く30を超えます。

 

あまりにも増えすぎたため、「資格の質を確保できてない」という批判が挙がっていることも事実です。「こんなに乱立してどうするんだ・・・」という。

 

本当に役立つの?自己満足じゃないの?

日本病院薬剤師会や日本医療薬学会が認定している専門・認定薬剤師を取得することは、大きな価値があります。

 

「がん専門薬剤師」に代表される専門資格は、その取得難易度が非常に高いため、資格保有者の質は保証されているといえるでしょう。

 

そもそも、感染制御専門薬剤師、精神科専門薬剤師などの専門薬剤師を取得するような薬剤師は、その領域で何年も研鑽を積んできた人ばかりなのです。
資格がなくても、現場で十分活躍できるスキルがあります。

 

しかし、薬剤師関連資格の中には、その領域の実務経験や実績がなくても、講義を聞くだけで取得できてしまうようなものもあります。
ぶっちゃけ寝ていても取れてしまうのです。

 

資格を取得することは素晴らしいことですが、実務で活かせなければ「自己満足」と言われても仕方ありません。

 

キャリアアップ・転職に役立つ専門・認定薬剤師資格とは?

 

それでは、数ある専門・認定薬剤師の中で、本当に役立つ資格はどれでしょうか。

 

今後の政策によって変化する可能性は十分ありますが、
現状、これは(将来的に)役立つだろうと考えられる資格をピックアップしてみました。

 

収益に貢献できる資格は強い

「資格に対する観点」において、雇われ薬剤師と経営者ではやはり違います。

 

薬剤師が転職する場合、その薬剤師の価値を評価するのは「経営者」です。
そのため、経営者の思考を知っておく必要があります。

 

医療は純粋な商取引ではないことはあたりまえですが、それでも「経営者」にとってもっとも重要なのは「収益」です。

 

いくら難関の資格を取得していても、それが収益につながらなければ、経営者にとってはほとんど魅力はありません。

 

逆にいえば、稼ぎにつながる資格を保有している薬剤師は、今後、出世や転職で大きく評価される可能性が高いです。

 

研修認定薬剤師

冒頭でも紹介したように、2016年の調剤報酬改定で、「研修認定薬剤師」の価値はかなり高くなりました。

 

調剤報酬にダイレクトに影響する資格となってしまったので、資格取得は必須となりつつあります。

 

かかりつけ薬剤師指導料の新設

新設された「かかりつけ薬剤師指導料」「かかりつけ薬剤師包括管理料」の算定要件には、研修認定の取得が必須です。

 

そのため、大手調剤薬局・ドラッグストアチェーンでは、雇用している薬剤師の研修認定の取得をサポートする動きが高まっています。

 

調剤基本料の算定要件にも

2016年の調剤報酬改定では、調剤基本料が5段階に分けられました(下図)。

調剤基本料の算定要件
調剤基本料1(41点) 処方せん受付1回につき算定
調剤基本料2(25点)

処方せん受付回数および集中率が、次のいずれかに該当 

  • 月4,000回超 かつ 集中率70%超 
  • 月2,000回超 かつ 集中率90%超 
  • 特定の保険医療機関に係る処方せんが月4,000回超
調剤基本料3(20点)

同一法人グループ内の処方せんの合計が月40,000回超 かつ 次のいずれかに該当  

  • 集中率95%超  
  • 特定の保険医療機関と不動産の賃貸借関係あり
調剤基本料4(31点) 調剤基本料1の※未妥結減算
調剤基本料5(19点)

 

調剤基本料2の未妥結減算

特別調剤基本料(15点)

 

調剤基本料3の未妥結減算

調剤報酬点数表(平成28年4月1日施行)、平成28年3月4日 更新、p1 、http://www.nichiyaku.or.jp/wp-content/uploads/2016/02/h28023_4.pdf、2016/5/26閲覧

 

※「未妥結減算」

 

医薬品の納入価格が「病院や薬局」と販売業者の間で決まっていない(未妥結)と、薬価調査の信頼性に影響が出るため、妥結率が50%未満の場合「初診料や再診料などを引き下げる」というもの 

 

(引用元:GLOBAL HEALTH CONSULTING、医薬品納入の「未妥結減算」、妥結率向上も「単品単価取引を阻害」―中医協の薬価・材料専門部会、メディ・ウォッチ、更新日2015/6/10、http://www.medwatch.jp/?p=3555、2016/5/26閲覧)

 

目的は、大手薬局グループの収益を抑えることです。
日本調剤、クオールといった大手チェーンは、医療機関の前に門前薬局を開設し、発行される処方せんをほぼ独占することで急激に成長してきました。

 

しかし、門前薬局という特定の医療機関からのみ処方せんを受ける形は、国が理想とする薬局とは違います。

 

立地依存からヒト(薬剤師)依存へ――これが、薬剤師の理想の姿なのです。

 

また、大手薬局チェーンの儲けすぎに対する批判も高まっています。

 

そのため、「特定の医療機関からの集中率が高い」薬局は、調剤基本料が減算されたのです。

 

しかし、調剤基本料2、調剤基本料3を、もっとも点数の高い調剤基本料1にする方法はあります。

 

それは、

  • 当該薬局に勤務する薬剤師の5割以上が、かかりつけ薬剤師指導料の施設基準に適合
  • かかりつけ薬剤師指導料を1人当たり月100回以上算定

これらをすべて満たせば、調剤基本料1に昇格が可能です(※調剤基本料5、特別調剤基本料は、調剤基本料4に昇格)。

 

ここでも「かかりつけ薬剤師指導料」加算のための「研修認定薬剤師」は必須となります。

 

基準調剤加算

さらに、大手薬局チェーンにとって痛いのが「基準調剤加算」

 

基準調剤加算(32点)の算定要件は「調剤基本料1を算定している保険薬局のみ」とされました。

 

調剤基本料は減らされ、基準調剤加算も算定できない――大手薬局チェーンにとっては二重苦です。
収益を大きく減少させる原因となります。

 

以上のように、「研修認定薬剤師」は、調剤薬局の収益に大きく影響を与えるようになりました。

 

がん専門薬剤師

がん専門薬剤師は、日本医療薬学会が認定している資格です。

 

がん専門薬剤師は、数ある薬剤師関連資格の中で、もっとも知名度が高い資格といえます。

 

それは、認定取得のメリットがはっきりしているからです。

 

まず、がん専門薬剤師は、薬剤師の認定資格のなかで唯一、医療法上広告可能な資格です。
医療機関は、がん専門薬剤師の在籍をホームページ等で宣伝することができます。
提供している医療の安全性・信頼性をアピールすることは、病院経営にとってとても重要です。

 

さらに大きいのは、診療報酬である「がん患者指導管理料3」の算定要件の一つが、「がん専門薬剤師の在籍」であることです。
医療機関の収益につながる資格というのは、経営側にとって大きなメリットになります。

 

2012年の診療報酬改定で「病棟薬剤業務実施加算」が新設されてから、病院薬剤師の採用が増加しました。

 

この現象からも分かるように、「稼ぎ」につながる「がん専門薬剤師」は、多くの医療機関が募集をかける貴重な専門資格となっています。

 

HIV感染症専門薬剤師

診療報酬に関わる専門薬剤師としては、HIV感染症専門薬剤師も忘れてはいけません

 

2006年4月1日から、HIV感染症は「ウイルス疾患指導料2」の加算が可能になりました。

 

「ウイルス疾患指導料2」の加算に関する施設基準の一つは

  • HIV感染者の服薬指導を行う専任の薬剤師が1名以上配置されていること

とされています。

 

患者数から言えば、HIV感染症専門薬剤師は、がん専門薬剤師と比べて活躍の場は狭いといえます。

 

しかし、先進国の中でも日本におけるHIV感染者の増加が著しいことを考えると、今後さらに活躍の場は増えるといえるでしょう。

 

専門薬剤師はチーム医療に大きく貢献している

日本病院薬剤師会、日本医療薬学会が認定している「専門薬剤師」は、歴史・知名度・取得難易度ともに最高クラスです。

 

日本病院薬剤師会、日本医療薬学会が設けている専門薬剤師
日本病院薬剤師会 日本医療薬学会
感染制御専門薬剤師 がん専門薬剤師
HIV感染症専門薬剤師 薬物療法専門薬剤師
精神科専門薬剤師  
妊婦・授乳婦専門薬剤師  

 

専門薬剤師を取得することは、その領域のスペシャリストとして公的に認められることです。

 

現代の薬物治療は高度かつ複雑化しており、毎年新規の薬剤が発売されます。
薬物治療の効果・安全性を確保することは、医師、看護師に大きな負担をかけるのです。

 

そのため、医師不足、看護師不足における負担軽減、薬物治療の効果と安全性を高める上で、専門薬剤師は頼りにされる存在です。

 

専門薬剤師は転職・キャリアアップに役立つ?

専門薬剤師の価値が高まる一方で、「専門薬剤師をとっても転職に有利にならない」という意見が言われます。
それは、調剤薬局やドラッグストアに転職する場合です。

 

こういった職場は、専門薬剤師がその専門性を活かせるだけの環境ではないのが普通です。

 

専門薬剤師の高い専門性が求められるのは、高度医療を提供する医療機関や大学病院です。

 

がん治療の専門病院では、がん専門薬剤師の保有を募集条件に掲げているところもあります。
専門薬剤師に資格手当てを支給する医療機関もあります。

 

「漢方薬・生薬認定薬剤師」はドラッグストアで活きる

漢方の理論は、西洋医学とはまったく別の理論で構成されているため、漢方に興味がなかったり苦手意識をもつ医師は多いです。

 

一方で、漢方を専門に扱っている薬局は、昔ながらの古い薬局である場合が多いように感じます。

 

漢方薬は「薬剤師ならでは」の領域であり、理論体系を修得すれば、大きな武器になります。

 

精神科、産婦人科など、漢方の特殊な使い方を求められる領域もあり、
国民の健康志向、ナチュラル志向と相まって、将来的にも需要があるといえます。

 

私が勤めていたドラッグストアでは、漢方薬局に長年勤めてきた薬剤師が漢方相談コーナーを立ち上げ、お客様の要望にこたえていました。

 

経営陣からの評価も高く、「特殊能力があることは強いな」と思いました。

 

「緩和薬物療法認定薬剤師」「認定褥瘡薬剤師」は在宅医療で活躍できる

薬局経営において、「在宅医療への貢献」はますます重要となっています。

 

国が在宅医療を推進し、調剤報酬でも在宅への参加が評価されていることから、
これからの薬局薬剤師は在宅医療のチームメンバーとして存在感を示していかなくてはなりません。

 

在宅医療に関わる専門資格があれば、活躍の場を広げることができるでしょう。

 

緩和薬物療法認定薬剤師

日本緩和医療薬学会が認定する「緩和薬物療法認定薬剤師」は、特に末期がん患者のペインコントロールに専門性が高い資格です。

 

緩和薬物療法認定薬剤師は、今後ますます在宅医療で重宝されるでしょう。
なぜなら、治療の舞台が「病院から地域」へ移っているからです。

 

迫る高齢化社会において、「自宅で治療を続ける」ことが必要とされ始めました。
もちろん、末期がん患者は「自宅で最後を迎える」ことを希望する方が多いです。

 

しかしその場合、「急変したらどう対応するのか」「急激な痛みが不安」「家族に迷惑をかけたくない・・・」こういった問題もあるわけです。

 

在宅医療において、医療用麻薬などの薬剤に精通している薬剤師は、医師、患者家族にとても頼られるでしょう。

 

認定褥瘡薬剤師

高齢化による寝たきり患者の増加に伴い無視できないのは、「褥瘡」です。

 

褥瘡とは、長期間寝たきりの患者の身体の一部(または複数)が、衣類や寝具によって圧迫を受けることで壊死してしまった傷のこと。

 

褥瘡は在宅医療についてまわる厄介な問題なのです。

 

褥瘡の予防・治療においてもっとも重要なことは体位変換と言われています。
体の特定の部位に体重がかかり続けるのを避けることができれば、軽度な褥瘡なら治癒します。

 

次に大事なことは栄養管理であり、自己治癒力を高めることが必要です。

 

そして最後にくるのが薬物治療
薬は褥瘡治療では最優先ではないのです。

 

しかし、褥瘡は適切な薬を用いれば、治療期間を短縮できることが報告されています。

 

最近の褥瘡治療では、「患部の湿潤環境を保つこと」が重要とされています。
つまり褥瘡から出る滲出液の量を適切に保つ必要があり、そのためには「適切な外用薬の選択」が不可欠です。

 

褥瘡治療薬の外用薬に含まれる主薬(薬効成分)は数%であり、ほとんどは基剤で構成されています。
基剤は滲出液を吸収するものから、乾燥した部位に水分を補給するものまでさまざまです。

 

「褥瘡の状態をよくみて、適切な外用薬を選択する」ことは、褥瘡の薬物治療においてもっとも重要であり、認定褥瘡薬剤師の専門性が発揮される領域です。

 

専門薬剤師・認定薬剤師を取得する上で気をつけたいこと

ゼネラリストよりスペシャリスト

薬剤師はもともとゼネラリストとしての資質を求められる職種です。

 

薬物治療について広く浅く把握し、全体像を把握していなければなりません。ここが、専門医との違いでしょう。

 

だからこそ、専門性の高い資格取得を目指すべきだと思います。
一つでも得意分野のある薬剤師は、他と差別化になりますね。

 

私の友人の病院薬剤師も、「専門性の高い得意分野が一つあれば、任される仕事が増える」といっていました。

 

関わってきたジャンルの資格を目指す

まったく関わりのないジャンルの資格をとっても、あまり意味はないと思います。
もちろん趣味でとるという楽しみもありますが、やはり実務に活かせる資格をとるべきです。

 

大学病院や総合病院の薬剤師は、調剤業務を数年学んだ後、担当病棟を任されます。そこで求められるのは、さらに深い専門性です。

 

医師と相談しながら「適切な薬剤の選択」「処方設計」に関わるためには、一般的な知識だけでは間に合いません。
実務で必要な知識を習得するために、認定薬剤師、専門薬剤師の学習を利用するわけです。

 

精神科病棟の薬剤師が「精神科専門薬剤師」を取得する、がん病棟の薬剤師が「がん専門薬剤師」を取得する、という流れが自然です。

 

簡単に取得できる資格は差別化にならない

これは、世の中にあふれる資格一般に言えることです。

 

やはり簡単に取得できる資格は差別化になりません。誰でもとれるので・・・

 

趣味ならどんどんやればいいですが、キャリアアップや転職を目指すなら、他人から「これは」と思われるような資格をまず一つ取得するべきです。

 

資格取得がゴールじゃない

「資格取得だけを目的とした勉強は本末転倒」

 

専門薬剤師・認定薬剤師を取得している多くの先輩はこう言います。

 

資格取得のための勉強は、あくまで自分の知識をブラッシュアップしたり補完したりするものです。

 

「資格取得後にどう実務に生かすのか」

 

これが一番大事ではないでしょうか。

 

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